#小説

「マイロ・スレイドにうってつけの秘密」

最初にこの本を開いたとき、429ページもあるのに活字が小さく、 最近目の弱くなっている僕には、読み続けるのが難しいかと思いました。 ところが読み始めてみると、ややこしい話しの割には親近感もあって、 もう少し、もう少し先まで読みたい、と止められ…

「天使の創造」

子育てを始めて思うことは、子どもの考えは、 いったいどこから来たものなのか、って事でした。 この本「天使の創造」の中では、主人公は夏希と言い、 産まれようとするところから、物語が始まります。 つまり産まれるときには、もう考えていることがあり、 …

「旅の終わりに」

マイケル・ザドゥリアンなんて作家は、知らなかったのに、 認知症の夫と癌末期の妻が旅に出る話には、関心を持ちました。 癌末期と言えば、ケア医療とかが盛んになっていますが、 痛みを和らげて死ぬのを待つだけなんて、つまらないと思う。 死ねば自由を失…

「国を救った数学少女」

読み始めてみると、頃はアパルトヘイト時代の、 南アフリカの貧民街で、主人公は12歳の黒人少女の話し。 あまりにも身近さからほど遠くて、最初は読みづらく、 最後までは読まなくていいや、と思った小説でした。 ところが読み始めてみると、テンポの良い…

「アンマーとぼくら」

図書館で何気なく手にとって、立ち読みをしていたら、 舞台が沖縄だったこともあり、読んでみたくなった本です。 作者の有川浩と言う人の作品は、読んだこともなくて、 「図書館戦争」や「県庁おもてなし課」は映画で見ており、 その原作者だって事は、後に…

「白神の老殺し屋」

「日本一の斬られ男」の異名を持ち、時代劇の悪役俳優として、すでに数多くの映画やテレビ番組に登場する、亀石征一郎さんの小説、「白神の老殺し屋」を読みましたが、これは本格的に面白かった。最近はあまり小説を読まないのですが、本のキャッチコピーに…

「誰もいないホテルで」

あまり読んだことのない、スイス人の作家で、 ペーター・シュタムの「誰もいないホテル」を読みました。 たまたま図書館で見つけて、なんとなく気になって、 手に取って読んでみたら、とても興味深い内容だったのです。 ほとんど人が訪れる気配のない、人里…

「愛の裏側は闇Ⅰ」

久しぶりに楽しく、心躍る物語を読みました。 シリアのダマスカスに生まれ、ドイツへ留学して亡命した、 ラフィク・シャミが描き出した、一大叙事詩と言える物語です。 309ページに及ぶ第1巻を読んだだけですが、心がときめいて、 早く第2巻を読みたい…

「神去なあなあ日常」

2009年5月に、徳間書店から出版された、 三浦しをんさんの小説、「神去なあなあ日常」です。 今年になって、映画化されると知って予告編を見たら、 これが何とも面白いので、小説を借りて読んでみました。 細かい設定は違いますが、都会の18歳が林業…

「原発ホワイトアウト」

この本「原発ホワイトアウト」は、昨年9月に出版された、 政府の内部事情を知る霞ヶ関の官僚による、暴露的な小説です。 小説形式は取っていますが、多くの登場人物も誰のことかわかるし、 リーク時代に相応しく、政府と電力会社の癒着を暴きながら、 今の…

「なずな」

集英社から、「待望の長編“保育”小説」 と謳って出版された「なずな」を読みました。 初出は2008年9月号~20010年9月号で、 本になったのが、2011年の5月ですから、 必ずしも、新しいわけではないのですが、 やっぱり保育小説というのは、…

「七緒のために」

久しぶりに、文芸作品らしい小説を読みました。 最近は小説を読むことが、めっきり減りましたが、 もともとは、文章で描かれた世界が好きなので、 読むほどに引き込まれるような小説は、大好きです。 それが最近では、文章に引き込まれて読むような、 いわ…

「王女のための骨董遊戯」

自費出版で本を出すことを、単なる自己満足ではなく、 新人の登竜門の一つと見るのが、幻冬舎ルネッサンスの本。 今回はその中の一つで、冬野真帆さんによるSFファンタジー、 「王女のための骨董遊戯」を読んでみましたが、面白かったです。 男たちの戦争…

「番犬は庭を守る」

現代日本の代表的な表現者となった、岩井俊二さんの書き下ろし小説ですが、 この小説は決して3.11によって描かれたわけではなく、それ以前から、 すでに映画企画として書かれていた題材を、小説という形で発表されたものです。 彼の表現は主に映画監督と…

「海に降る」

今年初めて読んだ小説は、先月書き下ろしで単行本出版された、 「海に降る」という、朱野帰子さんの深海海洋小説でした。 今まで、こうした深海を扱った小説自体がなかったと思いますが、 普段聞き慣れない専門用語も、比較的自由に使っていながら、 決して…

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」

2005年に発表されて、世界的なベストセラーとなった、 ジョナサン・サフラン・フォアによる長編小説の第2作、 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」が翻訳され、 7月末にNHK出版から発行されたので、読んでみました。 視覚的な効果を多用…

「ユダ」

幻冬舎ルネッサンスが、今年5月に電子出版として出した小説、 「ユダ」をいただいたので、さっそく読んでみました。 作品自体は、2008年の12月に単行本出版されたもので、 特に新作ではないのですが、僕自身は初めて読んだ作品です。 著者の晩夏さん…

「夏草のフーガ」

お婆ちゃんの意識が、ある日突然、中学一年生に戻ってしまう。 そんな荒唐無稽なファンタジック小説なのですが、読み始めると、 文章がわかりやすく明瞭完結で、するすると読めていきます。 いったいどんな人が書いているのかと思えば、すでに中堅作家で、 …

「夏至の森」

アメリカの代表的な、ファンタジー小説作家、 パトリシア・A・マキリップの新作「夏至の森」を読みました。 すでに世界幻想文学大賞、ローカス賞などの賞を取っている作家なので、 力量があるのはわかっていたのですが、独特の世界が面白い。 日本でもファ…

ノーベル文学賞

今年のノーベル賞は、日本人が二人ノーベル化学賞を受賞したことで、 この数日はその話題ばかりが、テレビ新聞を賑わわせているようですね。 いわゆる「物作りの国」は、科学技術こそが国力の基礎と位置づけて、 産業に結びつく研究には、惜しみなく援助を…

「アミ 小さな宇宙人」三部作

1986年にチリで出版された「アミ 小さな宇宙人」は、 世界11カ国語に翻訳されて、世界的なベストセラーになった本です。 日本では1995年に一度出版されたあと、2000年になって、 さくらももこの表紙と挿絵による新装改訂版が出て、現在19版…

「リックの量子世界」

創元社のSF文庫で、ちょっと風変わりなSF小説と思える、 ディヴィット・アンブローズの「リックの量子世界」を読みました。 何が風変わりかと言えば、僕の知っているSF作品のほとんどは、 未来を扱った“空想科学小説”だろうと思うのですが、 どうやら…

「妖精の女王」

ハリーポッターは、そのメジャー例なのでしょうが、 イギリスでは現在でも、魔法使いや妖精の話が盛んです。 文学の世界でも、アウトサイダーが大切にされるし、 大衆小説では、フェアリー・テイルが一つの分野になっている。 そんな雰囲気を、さりげなく使…

「天使の耳の物語」

田舎暮らしの今では、もう見ることもないのですが、 東京で暮らしていた頃は、小劇団の公演が好きでした。 東京キッドブラザースなんて、よく見に行ったけど、 今はもう解散してしまっているようですね。 そのころ見た演劇集団「キャラメルボックス」代表で…

小説 「本牧百貨店」Ⅲ-2

「記憶の初め、私は十九歳でした。まだ学生で、一年間パリへ留学したのですが、そこで知り合ったシリルという画学生と恋をしました。留学の期限が切れて、東京へ帰らなきゃいけない日の前日に、私はプロポーズを受けました。けれど彼もまだ学生でしたし、私…

「 19分間 」

もしかすると、今アメリカでもっとも売れている作家、 ジョディ・ピコーの「19分間」上・下を読み終えました。 早川書房の文庫本ですが、上下合わせておよそ920ページあり、 読み始めたときには、やたら多い登場人物が次々に主語になり、 決して読みや…

小説 「本牧百貨店」Ⅲ-1

Ⅲ サキはまたひとりになった。 あまりにも時を移動しすぎたのか、疲れていた。 心臓病でもないのに掌が汗ばんで、軽いめまいさえ感じた。体重を計れば五キロは減ったろうと思えるほど、躰がげっそりとして感じられる。なにしろ三時間のうちに何年もの時を過…

小説 「本牧百貨店」Ⅱ-2

青い顔をして飛び退いたナミは、ややあって現実に戻るとサキの顔をじっと見つめた。 「どうしたんだ」 サキもまた時の隙間を縮めることができないまま、たった一歩の距離を歩み寄れずにナミの顔を見つめていた。 「おねえちゃーん」 と健ちゃんの声がして、…

「ドストエフスキーより愛をこめて」

いつも太田さんの絡みが面白い、NHKのテレビ番組、 「爆笑問題のニッポンの教養」ですが、昨夜は特に興味深く、 「ドストエフスキーより愛をこめて」をやっていました。 最近ドストエフスキーがブームで、本が売れていると聞きますが、 僕も学生の頃に、…

源氏物語「葵」朗読会

春の源氏物語「桐壺」朗読会に続いて、 今日は秋の会として「葵」朗読会を行いました。 色鮮やかな葵祭を見に行くくだりから、 源氏のつれなさに身を焦がす女たちの様子。 そのひとり、御息所の生き霊がさまよい出て、 妊娠中の葵の上を悩ませ、苦しめる。 …