「七緒のために」

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久しぶりに、文芸作品らしい小説を読みました。
最近は小説を読むことが、めっきり減りましたが、
もともとは、文章で描かれた世界が好きなので、
読むほどに引き込まれるような小説は、大好きです。
それが最近では、文章に引き込まれて読むような、
いわゆる文芸作品で、魅力を感じるものが少なくなり、
自然とあまり読まなくなった、って感じでしょうか。

ところが島本理生さんの「七緒のために」の場合、
図書館にあったのを、なにげなく開いて読み始めたら、
その時点ですでに文章に引き込まれ、思わず借りて、
忙しい合間にも、なんとなく読み進んでしまったのです。
それはもう文章の魅力で、自然に描かれた表現力は、
読む者を掴んで離さない、不思議な力があったのです。
最近では珍しい、書き込むタイプの作家でしょうか。

僕は単行本で読んだので、二つの作品が収められており、
両方とも似たような、思春期の少女の危うい感覚が、
丁寧に描かれていたので、この作家はそう言う作家か?
と思いましたが、解説を読むとそうではないようです。
島本さんが「あとがき」の中で書いているように、
女の子同士の濃密な友情は、ほとんど書かなかったのなら、
この2作品は、貴重で異質な作品なのかも知れません。

しかも「水の花火」は、作家として初掲載された作品で、
それから10年の月日を経て、「七緒のために」が書かれ、
この2作品を読み比べるのも、なかなか味わいが深い。
と言うのは、ありのままに書いて一つの世界となっている、
水の花火」に比べて、「七緒のために」は技巧的で、
表現された言葉は、素朴なありのままから成長して、
現実を一つ越えた世界が、自然に描かれている凄さがある。

久しぶりに読んだ文芸作品で、このように引き込まれるなら、
たまにはもっと、文芸作品を読んでみるのも面白そうです。
この作家は普段どんな作品を書くのか、興味もわくのですが、
全く違うものだと、面白くなかったら困りますから、
しばらくは他の人の作品を読んで、文芸の世界に戻り、
そこからもう一度、彼女の作品を読んでみたい気がします。
やっぱり本格的な文芸作品は、世界を広げてくれますね!
 
 
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