「天使の創造」

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子育てを始めて思うことは、子どもの考えは、
いったいどこから来たものなのか、って事でした。
この本「天使の創造」の中では、主人公は夏希と言い、
産まれようとするところから、物語が始まります。
つまり産まれるときには、もう考えていることがあり、
考えに沿って産まれるって事は、親を選んでくるのです。

子どもが親を選んで産まれてくる、って考え方は、
以前から聞いてはいましたが、実感としては捉えにくい。
だけどこの本を読み始めたら、違和感は薄れていって、
むしろそのほうが自然かも、と思ったりしました。
産まれて成長して、自分が大人になって子を産むとき、
自分が産まれてきたときの記憶と、リンクするという話。

本の作者は、栃木県の山奥で高校までを生まれ育ち、
その後は保育士となって、働きながら結婚して2児を出産。
保育所所長となって、思い描いた理想の保育所を実現し、
35年間の保育士経験から、母親学級の講師を勤めている。
そんな彼女が、インドへ行って瞑想体験なども重ね、
自分の考えを本にまとめたのが、この一冊になります。

本の前半では、まだ自分が感じたことや考えを、
表現できない子どもの感覚が、よく伝わってきます。
言葉を自由に使えないからこそ、神の感覚がわかるので、
作者はこれを、天使の表現として受け入れようとする。
まだ幼い主人公は、言葉を覚える以前の宇宙感覚として、
世界をどう育てるかを知っており、導いてもくれます。

そして年月と共に、社会的人間として成長したとき、
人は幼い頃に持っていた、天使の感覚を失っているのです。
成長して結婚して、自分たちの子を産む段階になって、
失われた感覚無しでは、子を産む意味が見いだせません。
だけど幼なじみの友人や、自然の中で思い出した感覚など、
いくつもの要素が暗示して、また子を欲しいと思う。

この本の中では後半となる、成長した夏希の心と自覚、
揺れ動く気持ちの中で、結婚相手から問われた一言がいい。
「この世界で僕らに出来る、一番素晴らしいことは何だろう?」
その場では応えられないまま、夏希はこの言葉に引っかかる。
やがて知り合ったヨガの講師から、考えるヒントを得て、
今までの常識から離れて、真実を捉えるようになるのです。

小説の筋立てや内容は、伝いたいことがストレートなので、
その内容に関心が持てないと、読み進むことさえ難しいかも。
だけどこの独特の内容を、メッセージ小説として受け止め、
関心を持って読み進むなら、読み応えはあるでしょう。
子どもが持って産まれる、メッセージとは何かを考えるなら、
この作品は一つの小説として、良くまとまっているのです。