「王女のための骨董遊戯」

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自費出版で本を出すことを、単なる自己満足ではなく、
新人の登竜門の一つと見るのが、幻冬舎ルネッサンスの本。
今回はその中の一つで、冬野真帆さんによるSFファンタジー
「王女のための骨董遊戯」を読んでみましたが、面白かったです。

男たちの戦争によって引き起こされた「神雷」により、
一面の瓦礫となってしまった世界に、自己復元能力を持つ武器、
骨董機器がよみがえり、これを支配する女たちによって、
女性主導による、女尊男碑の文明が支配する社会が舞台です。

しかしながら、この小説に書かれた時代はさらに進み、
支配層である女の王族による統治は、すでに誇りを失って、
自らの利益や我欲のために、争いの絶えない時代になっている。
そこで世界の治安を担う大国、ジグモンディの騎士メリエラは、
巨偶機ギガスを操って、小国フローリーへ向かうのですが・・・

自己復元力がある骨董機器、と言うのも奇抜なのですが、
この作品に登場する武器や兵器は、科学的根拠など何もなくて、
純粋に夢見るような、創造力の世界で作られたものでしょう。
それがかえって新鮮で、我々が住む世界とは全く違う、
異次元の世界の話として、違和感なく読み進められました。

さらにこの小説では、主な登場人物が若い女性ばかりで、
王女や貴族や、妹や姉と言った女たちが活躍しているので、
どこか少女漫画か、少女小説の雰囲気が濃い作品になっています。
だけど決して、男の僕が読んでも違和感があるわけではなく、
むしろ作品の異世界に、抵抗なく入っていける不思議さもある。

科学的でないと言うのは、数学物理的でないと言うことで、
それ以外の奸計策略めいたことは、実に入り組んでいながら明確で、
登場人物が何を大切にし、どのような考えで行動しているかが、
刻一刻と移りゆく時間の中で、行動と共にわかってくるのです。

戦争というギリギリの世界で、闘いを仕掛けるか逃げるか、
どのように戦うかで、その存在の意義を見せつけるのも面白い。
正義と悪の闘いはいつの間にか終わっており、ならばこそ、
この戦争はどう終わらせるのか、最後まで緊張感が続くのです。
 
冬野真帆さんの小説、「王女のための骨董遊戯」は、↓こちらから。