#小説

「野菜畑で見る夢は」

図書館でたまたま目に止まり、表題に惹かれ手に取りました。 適当に開いて、ぱらぱらとページをめくりながら読んでみたら、 野菜に絡んだ幸せそうなシーンが、次々に出てきます。 これは読むしかないと思って、借りて就眠前の本にしました。 21編の短編小…

「プーカと最後の大王」

なにげなく出会って、 その深い瞳を見た瞬間から、 永遠の恋に落ちてしまったような、 素晴らしい本でした。 アイルランドの神話を巧みに取り入れながら、 時間と空間を自由に往き来して、 人間は今どこで何をしているかのかを明かします。 それは難しい理屈…

「ギンイロノウタ」

最近の若い人たちは、どんな小説を書くのか? と気になっていたところへ、先月何かの書評で、 村田沙耶香という、若い作家の書評が出ていました。 どんな書評だったか、よく覚えてはいないのですが、 気になって図書館に頼んで、読んでみました。 「ひかりの…

「ミスター・ミー」

先月の15日に、東京創元社から出たばかりの小説で、 イギリス人作家、アンドルー・クルミーの「ミスター・ミー」。 たまたま読む機会があったのですが、これは刺激的な作品でした。 世情に疎い老学者が、たまたまタイヤのパンクと俄雨によって、 少しずつ…

源氏物語千年紀

何年か前から、源氏物語に造詣の深い谷口先生の下で、 源氏物語を全編読み解こうという勉強会に参加しています。 月に一度、自主的に集まってやっているだけなので、 今ようやく「乙女」の段を読んでいるところですから、 いつ最後まで読み終わるのかもわか…

「グリーン・サークル事件」

最近はあまり面白いと思える小説に巡り会わないので、 何か確実に満足出来るような長編小説が読みたいところでした。 そこへイギリス、アメリカで数々の賞を取った推理小説作家、 エリック・アンブラーの「グリーン・サークル事件」が、 藤倉秀彦さんの翻訳…

「不良少女」

中年男性が主人公の、遊び心がたっぷりのシリーズ小説に、 樋口有介が書いている、柚木草平を主人公にしたものがあります。 その文庫本第七弾で、未収録だった短中編を集めたのがこれ。 そのために、デビューから間もない時期に書かれた作品と、 熟練してか…

自費出版大手「新風舎」の破綻

この何年かは、ちょっとした自費出版のブームに見えましたが、 そうした出版形態を他に先駆けて確立していた「新風舎」が、 20億円の負債を抱えて、民事再生法の適用を申請をしたようです。 この出版社には、僕も一度「BioDome702」でお世話になりました。…

「わたしの声を聞いて」

12年前の1995年に出版された「心のおむむくままに」の続編として、 スザンナ・タマーロの「わたしの声を聞いて」を読むことが出来ました。 この作品の素晴らしさと、前作との見事な調和について思いを巡らせながら、 また一つ、人間をすばらしいものと…

いろごのみ

今日は源氏物語の勉強会があったので、谷口先生のお宅へ行ってきました。 そこでひとしきり話題になったのが、来年が源氏物語一千年となる話でした。 これは、物語の書かれた正確な年月はわかってはいないながらも、 紫式部日記において、1008年の11月…

「砂の肖像」

久しぶりに、しっかりと味わいのある世界を読みました。 稲葉真弓さんの、石にまつわる短編5作品を集めた本でしたが、 それぞれの登場人物には、それぞれ石に対する思いがあって、 特に僕は、母の足を切断する「ジョン・シルバーの碑」と、 人気のない寂れ…

幽霊船 (4)

紫とピンクが、黄色と青に犯されたあざやかなワンピースを着て、足にはライトグリーンのショートブーツを履いた。少し心が浮き浮きとして、彼はこの奇抜な服装にふさわしいロングソックスと首飾りを求めて、衣装室のドアを開けた。木製の彫り物をあしらった…

「創作室」テスト

この文字の大きさで、小説などを掲載することを考えています。 本来は縦書きで読んでもらいたいのですが、なにしろコンピューター技術は、横書き文化の産物ですからね。縦書きの技術はあってもややこしいし、ブログの画面表示に入れるのは、今のところ僕の知…

「陪審法廷」

日本の裁判に、裁判員制度が採用される。 そう聞いてはいますが、今一つピンと来ない。 そう思っていたところに、楡周平さんの小説、 「陪審法廷」を見つけたので、読んでみました。 舞台はアメリカのフロリダ州で、裁判もアメリカ。 つまり書き手は日本人で…

「わたしたちに許された特別な時間の終わり」

久しぶりに、人から勧められて読んだ文学作品です。 「三月の5日間」と「わたしの場所の複数」の二作品で、 本の題名は「わたしたちに許された特別な時間の終わり」。 正直のところ、驚くような内容や新鮮味は感じませんでした。 初出が「新潮」ですから、…

「ひまわりのかっちゃん」

西川つかささんの、「ひまわりのかっちゃん」 いやあ、これはおもしろかったですねぇ~! 寝る前に読み始めたらやめられなくなって、 ファンヒーターが時間で消えたので寝たんだけど、 朝起きても気になって、そのまま全部読んでしまいました。 小学校に入学…

「わが悲しき娼婦たちの思い出」

久々に刺激的で面白く、示唆に富む小説を読みました。 2004年にガルシア・マルケスが書き下ろしたものを、 今年の9月末に、新潮社が翻訳出版したものです。 題名は「わが悲しき娼婦たちの思い出」となっていて、 川端康成「眠れる美女」の冒頭が頭に引…

「みずうみ」

(吉本ばなな)が(よしもとばなな)になってから、 急にこの人の小説が好きになって、全作品を読んでいる。 「みずうみ」は去年の暮れに出た最新作になるだろう。 例によって庄川図書館から借りたまま読んでいなかった。 いよいよ返却期日になって、あわて…

「マーメイド・スキン・ブーツ」

桜井亜美の空想恋愛小説ってものでしょうか。 読んでいて現実感がないし、新鮮なわけでもない。 それじゃなぜ最後まで読んでしまったかと言えば、 こうした感覚でしか今を捉えられない人たちがいる、 その一点で何かを表現していると思えたからです。 美大に…

「後宮小説」

酒見賢一の小説を読むのはこれが初めてです。 これは全部読み終わるまで知らずにいたのですが、 この小説は第1回ファンタジーノベル大賞を受けている。 この賞を取った取った作家は実力者が多いようだけど、 第6回の受賞者池上永一がその後書いた「風車祭…

「魔女と暮らせば」

先週、東京まで往復した高速バスの中で、 この本をゆっくりと読むことができました。 ダイアナ・ジョーンズの「魔女と暮らせば」 これは大魔法使いクレストマンシーを描いた、 最初の作品であり、彼女の出世作でもある。 1977年に英国で児童文学賞を受賞…

「魔法がいっぱい」

映画「ハウルの動く城」原作で有名になった、 ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品を、 図書館で見つけたので初めて読んでみた。 この人の作風には何人かのキー・パーソンがいて、 彼らの多くが他の作品にも登場しながら、 全体にダイアナ・ワールドを保って…

「ララピポ」お金と性欲

奥田英朗という直木賞作家の小説で、 「ララピポ」を図書館で借りて読んだ。 まるで三流週刊誌ネタの短編が6本。 東京の渋谷を接点にして集まる男女が、 お金と性欲にまみれて身を滅ぼしている。 いかにもこれが現代都会の姿のようだ。 読み方によっては低…

「ディラックの海辺にて」

ちょうど30年前の事になる。 まだ学生だった僕は初めて長編小説を書いた。 「ディラックの海辺にて」と題した小説は、 書き上げた後に僕は渡米してしまい、 5年後に一冊の本として仕上がった。 ところが販売方法を巡ってトラブってしまい、 どこの販売ル…

「オリーブの海」

図書館の新刊本コーナーにあったものを、 パラパラと読んでみたら好感が持てたので借りた。 12歳の少女を主人公にした小説で、 ニューベリー賞オナーに選ばれた作品らしいから、 これは児童文学と呼ばれるものなのだろう。 だけど日本でよく見かける子供向…