「魔法がいっぱい」

映画「ハウルの動く城」原作で有名になった、
ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品を、
図書館で見つけたので初めて読んでみた。

この人の作風には何人かのキー・パーソンがいて、
彼らの多くが他の作品にも登場しながら、
全体にダイアナ・ワールドを保っているようだ。
今回の「魔法がいっぱい」は4本の作品で、
それらはみんなクレストマンシーで繋がっている。

クレストマンシーは9つの魂を持つ大魔法使いで、
人間界の魔法的ごたごたは彼が管理している。
一見荒唐無稽で子供向けの作品になっているけど、
書いてある内容はとても読み応えのあるもので、
人間に対する深い洞察がないと書けないだろう。

「キャロル・オニールの百番目の夢」など、
少女が成長する様子を夢と絡めながら描いて、
母親も医者も直せなかった心の問題を、
クレストマンシーが解きほぐしていく様子は、
よほど深く子供心を知っていないと書けないものだ。

また「見えないドラゴンにきけ」を読んでいると、
人間の常識は固定されようのないものだって事を、
魔法の世界を通しながら自然に諭してくれる。
頭の柔らかい柔軟な思考でこども達に向かいながら、
この人の作品は世界の現状に一石を投げている。

魔法という荒唐無稽な素材を駆使しながら、
この作者が描いているのはやはりまた人間のことで、
世界の歪みを歪みとして見る純粋な心の持ち方のようだ。