自費出版大手「新風舎」の破綻

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この何年かは、ちょっとした自費出版のブームに見えましたが、
そうした出版形態を他に先駆けて確立していた「新風舎」が、
20億円の負債を抱えて、民事再生法の適用を申請をしたようです。

この出版社には、僕も一度「BioDome702」でお世話になりました。
1999年に、国連の国際環境計画が「地球環境悪化の防止は手遅れ」
と発表したのを聞いて、人類の将来を考えながら書いたSF小説です。
2001年の911事件の後、これを本にしておきたいと思った時に、
この新風舎共同出版システムで、実現することが出来たのです。

その当時は、こんな簡単に本を出すシステムは、まだ珍しかったので、
とてもありがたく思って利用しましたが、その後の様子を見ると、
毎年膨大な種類の本を出すようになって、漠然とした心配はありました。
いかに優れたものも、ある一定量を超えて過剰になると意味が変容する。
これは丸山圭三郎から教わって、身につけていた感覚なのです。
本の出版システムそのものを商売にした、この試みが破綻したのか?

さてこのとき作った「BioDome702」ですが、今その本の帯を見ると、
国連環境計画が「地球環境悪化の防止は手遅れ」と発表してから10年後、
2009年には「地球温暖化と水資源の悪化で地球及び生物環境が激変」
と書いてあって、それがもう来年に迫ろうとしています。そしてさらに、
3年後の2012年に、国連緊急理事会で「BioDome計画」が採択される。

これはもちろんSF小説でしかありませんが、現実の世界において、
来年の環境激変や、それに対する2012年の対応策は現実味を帯びてきた。
まさかこの小説のように、人類がドームの中でしか暮らせないなんてことに、
ならなければいいのに!と、本気で心配しなくてはならない状況です。

それではこの本は、ただ将来を予測して描いただけのSF小説かと言えば、
実は本当のテーマは、人間は何を目指して存在しているのかを問い掛けます。
詳しい内容に興味がある人は、本を読んでみてほしいのですが、
単細胞生命体から進化して、このように複雑な人間になった命は、
さらに進化して、霊性そのものになるかも知れないと書いているのです。

そして今、これからの社会にキーワードを探すフィロソフィアの集まりで、
この霊性の話が、盛んに盛り上がっていたのを見ていると、このSFは、
かならずしも荒唐無稽な話とは言えないだろうと思わずにはいられません。
そしてこの物語の主人公は、ドーム暮らしを拒否して旅を始めると、
自らが生きる場所、死に場所として、自然農による暮らしを考えるのです。


「BioDome702」は、今のところまだamazonで扱っているようです。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4797420219?ie=UTF8&tag=isobehon-22