「奇妙でセクシーな海の生きものたち」

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ユージン・カプランの「奇妙でセクシーな海の生きものたち」
たぶん日本では決してベストセラーにはならないだろうけど、
僕のように夏の一ヶ月間を、沖縄の珊瑚礁で過ごす者にとって、
これはもう、早く海へ行きたくなる罪深い楽しい本なのでした♪

海と言えば、まずその風景に惹かれ、次に貝や魚に惹かれる。
僕も次々にいろんな写真を撮って、水中写真にも挑戦しました。
とった写真は、全部デジタルデータで保管しているけど、
写真はあくまでも、実際の何かを思い出すための手段であり、
珊瑚礁の海で過ごす一ヶ月間こそ、人生最大の楽しみなのです。

いったい何がそんなに楽しいのか?と考えてみれば、
ちょっと見には、ただひたすら美しいだけの珊瑚礁の中に、
いくら見ても限りのない、豊かな命の世界が広がっていて、
その中に自分が存在することの喜びが、充実感を味わわせてくれる。
言葉で言えば、そんな風にしか表現できませんが、ともかく楽しい♪
珊瑚礁の海を巡り渡って、過ごす時間そのものが楽しいのです。

海中では魚を見ることに夢中になって、水中写真も撮りまくりました。
その多くは僕の大切なコレクションで、カスミアジの群と出会ったり、
ツムブリの群や、グルクンの群、ノコギリダイの群も嬉しいし、
巨大なロウニンアジとの、出会い頭にシャッターを押した写真など、
僕の生涯の宝物のような写真となって、今も大切にしています。
熱帯の海に特有な色の綺麗な魚や、可愛い魚の写真もたくさんある。

だけど珊瑚礁の海の魅力は、魚や貝だけではないんですね。
タコ、イカタツノオトシゴカニ、ヒトデ、クラゲ、ナマコ、
そのほか陸上生物にまさるとも劣らない、多様な生物がいるのです。
それらに気付いて、注意してみるようになると、また世界が広がる。
この本は、そうした浅瀬の生き物を興味深く紹介してくれるのです。

筆者は海洋生物学の第一人者で、本の内容は多様な知識が折り混ざり、
31の項目に分けてあるので、気が向いた時に好きな項目を読めばいい。
しかも、あらゆる生き物にとって大切な性の交渉が、必ず出てきて、
それがなんとも面白く、想像の世界までかき立ててくれるのです。
優れた教授の、海洋生物に関する連続講義を聴いているのと同じです。

マダコを取る話から、毒を持つタコの話、同じ毒のフグのこと、
タツノオトシゴは、メスではなくオスが出産する話なども興味深いし、
両性具有のアメフラシが、輪になってセックスする話は笑っちゃいます!
そうかと思えば、その割れ目が女性の性器に似ているとかで、
古くから貨幣代わりにまで大切にされた、宝貝の話も大変面白い。
この貝は色や模様のきれいなものが多いので、贈りものにも喜ばれる。

この本に出てくる生物は、専門科でないとわからないものもあるけど、
僕らのように海好きで、ゆっくり珊瑚礁に遊んだことのある者なら、
半分以上、7~8割の生物は実際に見ている類のものでもある。
それは本の中で、ふんだんに引用されている図解でも確認できるし、
名前を聞くだけで、自分が出会った時の様子まで思い出せたりして、
この本は写真のコレクションと同じように、思いでの宝庫になります。

31章で成り立っているのですから、きっとこの本の読み方としては、
夏の一ヶ月間を、珊瑚礁の海辺で過ごしながら、満潮の時間帯など、
一日に一章ずつ、のんびりと風に吹かれながら読むといいのかも知れない。
すでにほとんど読み終えて、また夏にもう一度海辺で読みたい本なのです。


ユージン・カプラン「奇妙でセクシーな海の生きものたち」は(↓)こちら。
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