「プーカと最後の大王」

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なにげなく出会って、
その深い瞳を見た瞬間から、
永遠の恋に落ちてしまったような、
素晴らしい本でした。

アイルランドの神話を巧みに取り入れながら、
時間と空間を自由に往き来して、
人間は今どこで何をしているかのかを明かします。
それは難しい理屈や哲学ではなく、
誰にでも親しみやすい児童文学という形を取って、
二男二女の子どもと両親が暮らす、
リディ家のある一年の物語として描かれている。

この作品を書いたケイト・トンプソンは、
1956年にイギリスのヨークシャーに生まれ、
1981年にはアイルランドに移り住んで、
1994年に最初の本を発行しているようです。
そして2005年に「時間のない国で」を出版すると、
これがイギリスのガーディアン賞、
ウイットブレッド賞児童書部門、
ビスト最優秀児童図書賞を受賞してしまいます。

そして昨年発表された「プーカと最後の大王」は、
その「時間のない国で」の続編となっているのですが、
前作を知らなくても楽しく読めるようになっています。
まずはプロローグで過去に何があったかを知らせ、
その時点で詳しいことがわかっていなくても、
登場人物と一緒に解き明かしていく楽しさがある。
少しずつ明かされる壮大な時間の流れがまた面白くて、
おもわず次々に先を読みたくなってくるのです。
所々に挿入された絵もイマジネーションを助けます。

どこにでもある欠点だらけの家族のなかで、
次女のジェニーは特別変わった子として描かれます。
学校へ行くのがイヤで時間なんて気にしないし、
毎日はだしで野山を駆け回っているのが大好きなのです。
だけどその野山にある古い遺跡には幽霊がいて、
ある大切なものを守り続けているのですが・・・・
膨大な時の流れに忘れ去られそうな秘密があって、
人間を喰う恐ろしい怪物プーカと最後の大王と、
そして今目覚めたジェニーの闘い知恵比べが始まる。

母親が子どもたちに語って聞かせるような、
平易な言葉と言い回しで物語は進んでいきます。
ジェニーの家族は珍しい音楽一家ではあるけど、
おっちょこちょいの父親や冷静な長男の様子などは、
どこにでもあるちょっと懐かしい平凡な家族なのですが、
実はこの家族にも大きな秘密があって明かされていく。
家族が抱える秘密は遺跡の秘密と繋がっており、
最後にジェニーの目覚めと共に全体が見えるのです。

これ以上のことはここには書きませんので、
関心をもった方はぜひ読んでみていただきたい。
エンデの「モモ」と同じ本当の世界が見えるでしょう。
ジャンルとしては児童文学になっていますが、
多くの大人にも読んでほしい一冊です。


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