「野菜畑で見る夢は」

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図書館でたまたま目に止まり、表題に惹かれ手に取りました。
適当に開いて、ぱらぱらとページをめくりながら読んでみたら、
野菜に絡んだ幸せそうなシーンが、次々に出てきます。
これは読むしかないと思って、借りて就眠前の本にしました。

21編の短編小説が、三人の女性の恋愛に合わせて展開し、
それぞれのお話は、野菜の味わいがほどよく絡められています。
著者が作家であるのを忘れて、小手毬るいさんの思い出のような、
あるいは今もどこかで、こんな物語が進行しているような、
それは希望としても、温かいスープのような感触の本でした。

好きだった人の忘れ形見を育てながら、彼への思いを野菜に託し、
必ず「大好きなあなたへ」で始まる、野菜料理が名人のママ。
その娘が通う学校で、野菜授業する先生の恋人は15年越しの女性。
二人は高校時代からの恋人なのに、一度分かれて再会している。
そして彼女の妹もまた、運命の人と出会いながら迷っている。
そのすべてのお話に、様々な野菜が彩りを添えて登場するのです。

三人の女性が主人公なのに、野菜を通して先生の顔が見えてくる。
すると三人の女性の彼氏がみんな、同じ顔を持っているような、
ああそうか、これは作者のイメージした一人の男性像だと気づきます。
本の帯には「野菜畑で愛を育む、はじめての野菜恋愛小説」
なんて書いてあって、ああ!やられたな!って感じだけど悪くない。

「春のキャベツは冬のキャベツと違って、巻きが優しいからね」
春先の彼女の誕生日に、そう言いながらお好み焼きを作ってくれる、
そのお好み焼きをひっくり返した裏に、彼女の名前が出てくるなんて、
ちょっと恥ずかしい気もするけど、思わず微笑んでしまいます。
そんな幸せエピソードに、野菜は上手に絡んで味を引き出すのです。

野菜作りの好きな小学校の先生が、陰ひなたで彼女たちを元気づける。
よほど野菜作りに詳しくなければ出てこない、興味深い話の数々に、
ついつい、るいさんが野菜に詳しいんだろうと思ってみたり、
それもどちらかと言えば僕らと同じ、自然農に近い感覚だなあ!
なんて思っていたら、最後の謝辞にこんな一行がありました。

「野菜に関する情報や体験談やレシピ、自然農法について、
 野菜畑で実施に起こることなどをあますところなく語ってくださった、
 ニューヨーク州在住の○○○さん、○○○さんご夫妻。」

なあ~んだ、そりゃあそうだよね、取材したんだよね。
だけどその相手が、ニューヨークで自然農をされている人!ってのが、
この短編集を味わい深いものにしている、調味料だと思うのです。
これからの恋愛には、自然農の野菜作りがよく似合うかも?(*^_^*)


小手毬るいさんの「野菜畑で見る夢は」は、こちら(↓)から。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4822247368?ie=UTF8&tag=isobehon-22