「オリーブの海」

図書館の新刊本コーナーにあったものを、
パラパラと読んでみたら好感が持てたので借りた。

12歳の少女を主人公にした小説で、
ニューベリー賞オナーに選ばれた作品らしいから、
これは児童文学と呼ばれるものなのだろう。
だけど日本でよく見かける子供向けの小説とは、
なんだか決定的に違うものがある気がする。

作者は米国ウイスコンシン州のケヴィン・ヘンクス。
この人は絵本でオールデコット賞にも選ばれている。
日本でも子供向けの絵本や児童文学は盛んだけど、
これほど深く人生と向き合っているだろうか?
これはお国柄?それとも作者の個性?

突然のクラスメートの死とおばあちゃんの老い。
あこがれの男の子とのときめきや真実。
暖かい家族の愛に包まれた女の子の成長が、
ほのぼのと、そして苦味を帯びて描かれている。
子供向けだから読みやすいってこともあるだろう。

最近は何を言いたいのか分からない小説も多い中で、
読んでいることが楽しくなる味わいのいい小説だ。
自分が子供だった頃のことを振り返りながら、
最後まで心地よく楽しく読ませてもらって、
しかも何か暖かいものが心に残る小説だった。