「後宮小説」

酒見賢一の小説を読むのはこれが初めてです。
これは全部読み終わるまで知らずにいたのですが、
この小説は第1回ファンタジーノベル大賞を受けている。
この賞を取った取った作家は実力者が多いようだけど、
第6回の受賞者池上永一がその後書いた「風車祭」は、
僕が夢中になって読んだ、大好きな小説の一つです。

ファンタジーノベル大賞を受賞するくらいだから、
後宮小説」は架空の話であって実話ではありません。
でも僕は、最初は史実だと思って読んでいました。
書き方自体が史実を探るように書いてあったので、
僕と同じように史実だと思って読んだ人は多いでしょう。
銀河、江葉、幻影達、混沌、菊凶、双槐樹、など、
個性的な登場人物が次々に現れて飽きることがない。

時代描写も、皇帝の世継ぎをつくるための後宮を、
徳川時代の大奥に見立てながら誇張して描き、
中国の歴史事情を知らない僕なんかはすぐ騙された。
先代皇帝が腹上死して、総入れ替えになる後宮に、
田舎から連れてこられる小娘、銀河が主人公で、
女大学で性技を教えられるなんて話しもありえない。
ありえないのに、え?と思いながら読み続けてしまう。
こんな話あるかもしれないと思わせるところがうまい。

読み終わって、やっとファンタジーだと気付いたけど、
個性的な登場人物は間違いなく僕の中で生きていた。
なにしろ、こんなヤツがいたら面白いだろうなあ、
と思うような人物を自由自在に登場させるのだから、
作者だって、書いていて面白かったに違いないでしょう。
とくに僕は混沌の生き方に心惹かれるものがありました。
Fiction と Nonfiction に境界線なんかないのかも。