「アミ 小さな宇宙人」三部作

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1986年にチリで出版された「アミ 小さな宇宙人」は、
世界11カ国語に翻訳されて、世界的なベストセラーになった本です。
日本では1995年に一度出版されたあと、2000年になって、
さくらももこの表紙と挿絵による新装改訂版が出て、現在19版です。
作者のエンリケバリオスは、チリでは有名な著作家のようですが、
日本では、この本以外の情報はほとんど知られていません。

僕がこの本に出会ったのは、今年の8月のことでしたが、
読み始めてすぐに、自分が言いたかったことの多くが書いてあり、
じゅうぶんに大人向けの作品でありながら、子ども向けの体裁を取って、
しかもそうした事情さえ、本の内容になっていることに感心しました。
まずは第一巻では、少年ペドゥリートが小さな宇宙人アミに出会い、
宇宙船に乗せてもらって、人間の生き方を教わる話から始まります。

宇宙の基本法は「愛」だと教えられて、迷いながら受け入れた少年は、
やがてその体験を小説に書きつづったのが、「アミ 小さな宇宙人」です。
そして約束通りこの小説を書いたことで、再びアミと合うことができ、
同時にペドゥリートは、双子の魂であるビンカにも出会います。
宇宙の基本法としての「愛」と、人間を結びつける男女の「愛」を、
具体的な存在としての「双子の魂」で、わかりやすく表現されていく。

そしてその様子を書き表したのが、第二巻となる「もどってきたアミ」で、
実際に指示されたとおりに、自分が体験したことを小説にしたとします。
一巻目の内容があまりに完結して見えたので、二巻目や三巻目は、
本が売れたので続編を書いただけなのかな?と思って読んだのですが、
それは大きな間違いで、作品に加わる人にはそれぞれの役割がありました。
第二巻では、人間的な愛の感じ方を永遠の愛に繋げて考えさせるのです。

そして第三巻では、愛し合う二人のさらに周辺にいる家族や友人、
多くの人たちとの絆が、どのように愛で繋がっているかを見せてくれる。
まるで宇宙を舞台にした冒険活劇のように、はらはらさせながらも、
愛の法則を信じる限り、どんなに困難に思われることも解決していく。
なぜなら、アミが教える宇宙の基本法や親交世界の知識レベルは高いので、
ほとんどのことは、その知識と技術で解決する方法があるからです。

最後はハッピーエンドになるのですが、実際の人間界に照らして、
人類もそのように、高いレベルの文明社会になる可能性があるとして、
「どのようにしたら愛がくるようにできるのか」まで書かれているのです。
しかもその内容は、キリスト教の聖書に求めたと思われる文言を使い、
決して場当たり的でない、筋の通った展開を見せるのも興味深いのです。
少年の疑問と成長は、どこまでも読者に寄り添って書かれています。

ただし、ここに書いてあることの仔細なすべてが正しいかと言えば、
僕には間違っていると思われる、たくさんの具体的な表現もありました。
だけどそれは、読者によって様々な判断がありそうなので言いません。
ただ大切なのは、微細に書きすぎた表現に疑問に思えることが多いとしても、
全体としてこの作品が伝えてくる、人間の進歩に対する明確な方向付けは、
これから僕らがどんな社会を建設すべきかに、大きな示唆を与えるのです。

すでに25年前に書かれたこの作品は、今もまったく色を失うことなく、
先日立ち寄った高岡の喜久屋書店では、しっかり海外小説部門にありました。
人間とは何か? 神とは何か? といった疑問に、宇宙人アミが答える。
それは説教じみることなく、具体的に見聞き体験することを通して、
すなわち僕らは、少年ペドゥリートを通じて理解していくことになるのです。
その価値観は、僕らが普段から思っていることに繋がるから不思議です。
 

書籍情報は、それぞれ以下のリンクからご覧ください。

もどってきたアミ~小さな宇宙人
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4198612714?ie=UTF8&tag=isobehon-22

アミ3度目の約束~愛はすべてをこえて
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4198612722?ie=UTF8&tag=isobehon-22