「こどもの時間」

マザーランド制作の「こどもの時間」を見てきました。
埼玉県桶川市にある「いなほ保育園に通うこどもたちを、
ひたすら撮した記録映画で、演出はまったくありません。
最近のこども達は、カメラ慣れしてしまった子が多いけど、
この記録映画は、5年もかけて撮ったことによって、
こども達の世界へ自然に溶け込んだ目線を持っている。
ありのままのこどもの世界を描いている点がとてもいい。

普通の保育園や幼稚園では、早くこどもを躾ようとして、
大人の世界に都合の良い決まり事を押しつけることが多い。
でもこの保育園では、そうした押しつけを極力避けて、
あくまでものびのびとこどもの世界を大切に見守っている。
そこにこどもの人格や自主性はもちろん、思いやりのような、
大人がこどもに教えているかの如き優れた人間関係さえも、
こども同士の関係から自然に芽生えて育っていくのがわかる。

ここまで徹底してこどもの視点でこどもを見る映画は珍しい。
さらにこうした保育園の試みは、実際にやろうとすれば、
「もしも何かトラブルが起きたら」なんて心配が先走りして、
なかなか現実には挑戦できないことが多いようだ。だけど、
現代のようにあらゆる危険を保育園で管理しようとする方が、
よっぽど不自然で、何か尋常ではないものを感じてしまう。
どうしてもっと自由に子育てが出来ないのか不思議だ。

そうした疑問をどうやってクリアするのかは描かれていない。
たぶんこの幼稚園の運営は大変なご苦労があるのだろうけど、
それでもこんな自然に近しい環境でこどもは育ってもらいたい。
大量に撮されたフィルムの中から、思わず見とれるような、
活き活きとしたこども達の表情を見ているとそんな気になる。
考えてみれば、大人の世界だってこどもの世界と同じ事で、
管理はなるべく少なく、自由に生きられる方がいいと思う。