「ダンガル」

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2009年に、「きっと、うまくいく」を観て以来
すっかりファンになった、アーミル・カーン主演映画。
2本目に観た「PK」も、優れた内容と面白さで、
僕にとってインド映画と言えば、カーンの映画となりました。
そのカーンが主演する新作が、「ダンガル」ですから、
期待しないわけに行かないし、その期待を裏切らなかった。

彼の主演映画は、インド映画の歴代興行収入1位を5回記録して、
そのトップが「ダンガル」(376億円)、だったのです。
彼は人柄としても、世界中で愛されているようですが、
作品も社会問題を扱っていながら、ユーモアもたっぷりある。
2014年の「PK」では、宗教的な問題を扱っており、
これがインドでヒットしたことに、驚かされました。

そして今回の「ダンガル」では、インドの実話を下にして、
女性が差別されるインドの実情に、真っ向から挑んでいるのです。
インドでは女の子が生まれても、父の跡継ぎにはなれなくて、
特にレスリングでは、男の子でなければならなかった。
アマチュアレスリングのインド代表だった、マハヴィルは、
自分の後継者を育てて、国際大会での金メダルを夢見ますが、
生まれてくる子は、女の子ばかりだったのです。

夢を諦めようとした父の前に、娘が謝ってきたのは、
男の子にケンカに勝ったことで、父は再び夢を見るのです。
自分の娘にレスリングを覚えさせて、国際舞台で勝たせたい、
そう決心して、翌日から厳しい訓練を始めました。
この訓練の過程は、実際には退屈な期間かも知れませんが、
映画では興味深いエピソードを並べて、観る者を飽きさせません。

小さな村なので、女の子をレスラーにするなんてばかげている、
と笑われますが、やがて大会で男子に勝つようになると、
俄然期待されるようになって、村の英雄として迎えられます。
それでも女子が進出するには、様々な障害が立ちはだかりますが、
父と娘の信頼関係で、これらを克服していくのです。
父のあまりの厳しさに、逃げ出そうとする娘ギータに対して
「女の子は子どもを産んで、家事をするだけ」と嘆く友人の一言。

その言葉を聞いて、ギータは父の愛情に気付くのですが、
このあたりの描写は、今の日本ではわかりにくいでしょうか。
インドが抱える大きな社会問題の一つ、女性問題が登場しますが、
問題を問題として声高に叫ぶのではなく、レスリングで目指す。
国際大会に出場するようになってからも、困難は続きますが、
最も大きな試練は、父との信頼関係が揺らいだ時におこります。

権力を持つコーチとの確執とか、女子特有の誘惑とか、
多くの困難を乗り越えて、最後にギータは金メダルを取る。
このも物語は、以前から多くの人が知っていたでしょうけど、
徹底して役作りをするカーンによって、目の前で観ることができた。
そこにはインド人でないと分からないことも、あったでしょうが、
結果として僕らは、映画で感動を共有することができたのです。