「ことわざのタマゴ」

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意外な感じの、面白い本に出会いました。
時田昌瑞著となっていますが、まるで大掛かりに、
編纂された辞典のようでもある、「ことわざのタマゴ」。
今年の2月に、朝倉書店から出版されたものですが、
800余のことわざに対して、詳細に解説がしてあります。

最初にちょっと見たときは、細かい文字の3段組で、
びっしりと何か書いてある様子は、取り付きにくい感じ。
ところが実際に中を開いて、ことわざを読んでみると、
どこかで見たことのある言い回しが、次々に出てきます。
内容の解説はもとより、どこで使われたフレーズか、
しっかり事実検証をしてあるのも、驚くばかり。

しかも僕らが普段から、聞き慣れたことわざばかりでなく、
欧米やアジアのことわざまで、幅広く収録されています。
例えば、「米の飯とお天道様はついて回る」などは、
アジア圏に限られたことわざで、楽天的な特徴を持つと紹介。
ことわざの多くは、シニカルで皮肉っぽい内容ですが、
この言い回しには、大らかさがあって良いと言っています。

なるほどこの本が辞典ではなく、(当世コトワザ読本)
と謳っているように、どこかに主観の暖かみがある。
それがこの本を、必要に応じて調べる辞書ではないとする、
著者と出版社の心意気があり、タマゴと言う理由だろう。
そう思って読んでみると、ことわざと言うだけあって、
それぞれに紹介されている内容も、味わい深いものでした。

あらためて、これだけの内容を一人でまとめられた、
著者のご苦労には、頭の下がる思いがしましたけれど、
かなり話し好きの人で、嬉々として書かれたのかなとも思う。
本を適当に開いて、好きなところから読んでもいいし、
目次には内容別の項目があって、
1.訓戒・道しるべ、 2.人と神様、 3.人と人、
4.世の中、 5.気象・地理など、 6.衣食住・道具など、
7.動植物、 8.ことばの戯れ、 となってもいます。

さらに何か、特定のフレーズの内容を詳しく知りたいときは、
巻末にあいうえお順の索引もあるので、利用価値は高い。
ことわざの歴史や、言語芸術性などについても、
コラムをつかって、掘り下げてあるのも嬉しい限り。
僕らは日常会話でさえ、ことわざはよく使いますから、
この本があれば、会話も豊かになるに違いないでしょう。