「心と体を蝕むネット依存から子どもたちをどう守るのか」

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ネット依存の問題は、以前から知ってはいましたが、
アルコール依存などと違い、子どもがなりやすいのが怖い。
と言っても実際はどうなのか、ちゃんとしたデータに基づいて、
どんな現状があって何が問題か、知りたいと思っていました。
そこでミネルヴァ書房から出ている、この本を読んでみましたら、
この数年で急速に拡大している、依存症の正体が見えました。

実はネット依存の問題は、10年前にもありましたが、
当時はインターネットが中心で、今は携帯スマホが中心です。
パソコンの前に座るネットなら、親に見つかりやすいし、
隠れてやるにも限界があって、若年化はしにくかったと言えます。
ところが携帯スマホの普及によって、見つかりにくくなり、
子どもたちが自分の端末を持つので、急速に広まったのです。

ネット依存になりやすいタイプが、いくつか紹介されていますが、
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(1)子どもの頃から様々な勝負事が好きで、
    学校の成績も悪くない人。
(2)人付き合いが苦手で、
    友達を作れず引きこもりになりやすい人。
(3)ADHDやASDの傾向があって、
    社交不安障害の傾向がある人。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこうした人が、
好きなだけネットを使える環境にあると、依存症になりやすい。

そしてネット依存になってしまうと、様々な症状が現れます。
●視力の低下 ●体力の低下 ●頭痛 ●寝不足によるけだるさ
●肥満 ●腱鞘炎 ●腰痛 ●栄養障害 ●体重減少 ●発育障害
こうした症状は、★寝ない ★動かない ★食べないのが原因ですが、
本人は自覚症状がなく、注意されると怒り出したりするのです。

本書では、このときの脳の働きなどが詳しく紹介されますが、
そうしたことに関心がない人は、飛ばして読んでも良いでしょう。
しかし実際に依存症になってしまったら、どうやって治すのか、
この本にはその点に関しても、詳しく整理して紹介されています。
まず医療検査によって、健康を害していることを理解して、
自ら治そうとする意思を持たせることから、始めることになる。

そこから先は、カウンセリングによって理解を深めながら、
体力を回復させて、ネットの時間を短縮させて行くことになります。
さらに重症の人の場合は、今は入院による治療もあるようで、
久里浜医療センターの、治療キャンプの内容も紹介されていました。
資料として、日本全国のネット依存の専門治療施設や福祉センターなど、
相談を受け付ける機関なども、掲載されているのです。

お隣の韓国では、すでにネット依存による死者も出て社会問題となり、
国の対応が始まっていますが、日本ではまだ国の動きは少ない。
地方自治体レベルで、ネットの利用を規制している所もありますが、
それもまだ少ないので、各家庭での自主規制が必要になります。
内容によるフィルタを設ければ済む話ではなく、どんな使い方でも、
依存症にならないような、利用の制限が必要になっているのです。

この本を監修している樋口進さんは、久里浜医療センターの院長で、
中高生の現状と、これからのネット社会に危惧を抱いているのでしょう。
僕らはせめてこうした本の内容を理解して、社会全体として健全な、
便利で快適なネット社会になるよう、ルール作りが必要なのです。
ネット依存の予防に向けて、こうした本の役割は大きいと思うので、
ぜひ多くの人に、読んでいただきたいと思いました。