「太陽の蓋」

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先日高岡では、「太陽が落ちた日」上映会があって、
これは今月13日のブログに、少し紹介しておきました。
この上映会を企画した人たちが、もう一本見たいと言った
映画「太陽の蓋」が、もうレンタルDVDになっている。
まだ新作扱いで高かったのですが、思わず借りて観ました。

これはプロの俳優たちによって、演じられた劇映画ですが、
当時の首相や官房長官などが、実名で登場しているので、
下手なドキュメンタリー映画よりも、よほど生々しい。
当時僕らが新聞テレビで見ていたことを、今冷静になって、
もう一度見ることによって、果たして何が分かるのか?

およそ2時間半に近い作品で、しかも特別付録として、
何本かの短編が付いており、本編に編集仕切れなかった、
監督の強い思いが、こうした形で残ったのでしょう。
3月11日の地震直後から、メルトダウンを経験して、
日本滅亡の危機を乗り越えようと、奔走した人たちの記録。

見始めてまもなく、地震の場面から後は時間を忘れ、
次々に起きる緊急事態に、いつか当時の緊張感を思い出す。
以前からイソップ通信を見ていた人には、おわかりでしょうが、
僕らは繰り返し、原発の危険性を説いてきていたので、
当時何が起きていたかは、リアルタイムで分かっていた。

さらに言えば、分かったところで僕らには何も出来ず、
ただ言われるままに従うしかないのが、原発というものです。
誰かに避難しろと言われれば、避難するしかないうえに、
この事態を収束させる手立ても、特別な人に握られて、
住民はただただ受け入れるしかないのが、原発なのです。

ほとんどの市民は、作られた原発安全神話を信じており、
信じなかった僕らのほうが、おかしいと思われていた。
だけど僕らは、ほとんどデジャビューを見るように、
いつかこうなることを、分かっていたと言ってもいい。
悲しいかな人間のやることを、止められなかったのです。

当時の福島第1原発から、作業員を撤退させるかどうか、
検討する場面がありますが、映画では「視野に入れるべき」、
と進言している危機管理監は、実際には反対していた。
こうした事情を述懐する、寺田学さんの記事もありますので、
僕らはそうしたことも、この映画を通して検証できます。

ここに描かれたほとんどのことは、すでに公表されて、
特別目新しくはないのですが、臨場感は映画でしか示せない。
さらに刻一刻と迫る危機に対して、政府は何を出来たのか、
東電は何をしたのか、新聞記者は官邸スタッフはと、
いくつもの視点で俯瞰的に見ようとする、目新しさはある。

今や6年が過ぎて、避難指示解除される場所が増えたけど、
原発は相変わらず稼働しており、危機が去ったわけではない。
僕らはいつまで、滅亡の危険と背中合わせに生きるのか、
経済のために国民を危険にさらすような、そんな政治ではなく、
人間の自主性が未来を切り開く、そんな政治にしてほしい。

福島のことを忘れないためにも、この映画を見て、
もう一度当時の緊張感を思い出し、未来を考えてみたい、
そんな思いを揺り動かす、貴重な映画だったと思うのです。
こんなことが二度と無いように、早く原発をやめて、
人間的な経済による、社会の再構築を望むしかありません。