「フランス女性は80歳でも恋をする」

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フランスで結婚した日本の女性が、20年間パリに在住して、
出会った55人のマダムから、学び得た人生の知恵を書いた本。
軽いエッセイの本ですし、人生を散歩するような気持ちで、
つらつら読み始めてみると、これが結構読みようによって面白い。
章ごとにテーマを持たせて、知り合った人を紹介することで、
生き方のエスプリのようなものが、うまく透けて見えてくるのです。

5つの章は、必ずしもフランスならではの事とも思いませんし、
それぞれのエピソードも、日本人にも見られると思う事ばかりです。
だけど日本だとかフランスだとか、国境を越えて見たときには、
なるほど人生の何か、大切な秘密が浮き上がって見えてくる。
そして全体の雰囲気として、こうした人が大勢いることが、
フランスのパリってことかな、とようやくパリの街が見えてくる。

アンチエイジングと称して、若く見られることばかり気を遣い、
年齢が重要な日本の文化に比べて、フランスの価値観は大きく違う。
いくつになっても、「人生何があるか分からない」と考えるから、
いつも自分の生き方を持っていることが、大切な要素になってくる。
すべての人を同じ基準で見る日本と違って、フランスでは個性を重んじ、
他の人とは違う自分を演出することで、魅力を引き出している。

こんな感じで、日本とフランスの文化の違いが紹介されていきますが、
よく考えてみたら、僕の周りにもこうした女性は結構いるのです。
だけどんなに自己を確立した女性は、日本では主流にはなれなくて、
国別の特徴を現そうとすれば、確かに没個性の日本文化が見えてきます。
その点でフランス文化は、徹底した個人主義なところが日本と違い、
食事の注文の仕方を考えても、日本とフランスでは常識が違うのです。

日本人の食事は、皆同じものを食べることで安心するのですが、
フランス人は個々人が、自分に合った調理の仕方を求めて注文する。
日本人の協調主義に対して、フランス人は対極にある個人主義で、
これだけ価値観が違うのに、生き方に共感できるのも面白い。
こうした常識の違いさえ、実は結構ハードルの低いことで、
日本にいてもフランスにいても、ワンランク上の生き方がある。

テレビを消して、マスコミの情報には惑わされないようにするとか、
自然の中の暮らしを大切にして、ヴァカンスを田舎で暮らすとか。
孤独を愛して自分を見失わないために、自分のスタイルを持つことで、
個性的に生きるから、自分に責任感も生まれてくるのです。
「結婚していなくても幸せ」「婚活もマニュアルも要らない恋愛術」
「恋に数字は求めない」なんて、実は日本にいても求められる。

十人十色と言いながら、人と違うことを嫌うのが日本文化なら、
人との違いを個性として重んじるのが、フランス文化って事でしょう。
だけど気持ちよく生きようとすれば、そんな常識にも囚われずに、
自由に個性的に、多くの人と協調して生きるのもありかなと思いました。
この本はそうしたことを考えさせる、心地よくお洒落なエッセイ集で、
街の小さなカフェでおしゃべりするような、楽しさがありました。