自生する大根
もともと大根は生命力が強く、よく自生してくれます。
しかも自生した大根は、植えた大根よりもさらに強くて、
四季を通じて、思わぬ収穫をもたらしてくれるのが有り難い。
今年も畑を覆っていた雪が、次第に溶けてくるに従って、
この通りに太くて立派な大根が、目につくようになりました。
この場所はタカキビを植えてあった場所で、去年の秋には、
タカキビの茎と周辺の雑草で、この大根には気づきませんでした。
そして一帯が雪に覆われ、その雪が溶けてくればこの通り、
雪で押しつぶされた雑草を除けて、大根が目立ってきたのです。
しかもこうして大きくなった大根は、味も良い感じがする。
元々は野生の植物だったものを、人間に都合良く改良して、
今日の大根があると思えば、こうした自生大根は不安定でもある。
何代も安定して大きくなる種を得るには、年月が掛かるので、
一般には種のことは種屋に任せ、育てて収穫するのが農家です。
だけど自然農やオーガニックの農業者は、種もなるべく自家採取で、
モンサント等には頼らない、自立した未来を目指しています。
種の交換会などやって、昔からの野菜を固定種にして守り、
大量生産ではない食品を作って、楽しんでもいるのです。
その方が多様性が維持できるので、健康にも良いと思えるし、
料理の幅やレパートリーも広がって、食生活が豊かになります。
金太郎飴のような大量生産ではない、個性豊かな暮らしを求めて、
お金や量ではない、個性と質の広がりを求めているのです。
とまあ大げさなことを言いましたが、大切なのは楽しむこと。
他人から言われたことや、大衆知識をそのまま受け入れないで、
信頼できる個々人の付き合いの中から、信と真を選び取って、
それを思うままに楽しむことが出来れば、それが良いと思うのです。
ただ繋がれば良いのではなく、信頼関係を紡ぐことが大切です。
春にはまだ早いでしょうが、こうした大根を見ていると、
単に有り難い以上に、様々な思いが沸き上がっても来ます。
誰にも期待されていなかった一つの命が、こうして形になり、
新たな可能性を見せたことで、沸き上がってくるものは何なのか。
僕らの命もこのように、自然に逞しくあって欲しいと願います。