世界を揺るがす諜報戦
今月11日のこと、ニューヨークのトランプタワーで行われた、
トランプ次期大統領の記者会見において、CNNの記者の質問が拒否されました。
「あなたの所は偽りのニュースを載せている」と言う理由だったのですが、
いったいどんなニュースかと思えば、
「マケイン上院議員が12月9日に、ロシア情報機関がトランプの弱みを握っている、
とする報告書のコピーを、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官に渡した」
と言うものです。
その報告書の全文がネットに公開され、報告書を書いたとされる英国、
MI6のスティールなる人物は、ロンドンの豪邸から姿を消している。
報告書によると、トランプ氏がロシアの高級ホテル「リッツカールトン」
に泊まった際に、複数の売春婦を呼んで変態プレーをしていたと言うのです。
この材料を元に、ロシアはトランプ氏を脅したり甘い言葉を掛けたりして、
5年間にわたって、トランプ氏に影響を与えてきたという報告です。
さらに先のアメリカ大統領選挙では、トランプ氏とその側近たちが、
有力候補であったヒラリー・クリントンを含む、対立候補の情報を受けていた。
これが今騒がれている、ロシアによるアメリカ大統領選挙への妨害であり、
アメリカはロシアの外交官を、強制退去させた真相だったと言われます。
それに対してロシアは、繋がりのあるトランプ氏が新大統領になることから、
強い対抗措置は取らないで済ませている、と言う構図でしょうか。
今月下旬には、まず英国首相とトランプ大統領が会談する予定なので、
ロシアがその前に、トランプ氏と英国や欧州各国との仲を良くさせたくない。
さらには欧米の自由と民主主義への懐疑を膨らませ、結束を弱めさせて、
ロシア寄りの外交を強めたい、と言う策略が働いていると見られます。
それはトランプ氏といえども、望まない方向だと思うのですが、
今のところの情勢を見ると、確かにそのように動いていると思われる。
諜報戦において、ロシアのプーチンは常に一歩先んじているので、
英国MI6のスティールと言えども、利用された可能性だってあるでしょう。
もう二度と姿を現さない可能性だって、考えておく必要があるのです。
そして真実は闇の中のままに、具体的な政策は決められていくのだとすれば、
誰が黒幕で誰が誰を操っているのか、知らないと何が起きるか分からない。
思想や理想の違いを議論しないで、知謀知略で政治が決まるのです。
市民が真剣に正義とは何かを議論しているあいだに、為政者たちは、
諜報活動と情報操作によって、ひたすら利益誘導に明け暮れる。
いったい彼らは、そうやって何を得たいと思っているのか、
最後の黒幕は何を求め、どうなれば満足するのかが分かりません。
政治手法に長けて利益を誘導する、政治のプロを批判するのはいいけど、
その先に何を求めるのか、トランプ氏は余りにも危うい気がします。