バーニー・サンダースによる「TPPに反対する四つの理由」

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トランプ氏もクリントンさんも、選挙中に、TPPには反対すると言っていましたが、
これほど多くの人が反対するようになったのには、バーニー・サンダースの演説があります。
2015年5月14日に行われた、アメリカ上院でのTPP・ファストトラック法案反対演説が、
最近になって、日本語字幕で見られるようになりましたので、これを紹介すると共に、
「TPPに反対する四つの理由」について、ザクッと文章にしておきましたので、参考にどうぞ。

YouTubeの演説視聴サイト

< 演説の主な内容 >

第1の理由:
 ベトナムやマレーシアや他の10カ国と結ばれるこの自由貿易協定(TPP)は、
 NAFTA、CAFTA、中国との恒久的正常貿易関係、米韓FTAのような、
 過去の破滅的な貿易協定をなぞって作られている。
 これらの貿易協定は、十分な賃金が得られる数百万の雇用を私たちから奪い、
 アメリカの労働者が、1時間1ペニーで働く低賃金の国々の労働者との競争を強いられる、
 「底辺への競争」につながったことが明らか。
 ビル・クリントン大統領は、NAFTAが、5年間で100万人の雇用を創出すると
 約束したが、実際には、70万人の雇用喪失に繋がった。
 中国との貿易協定では、270万人もの雇用を奪い取った。
 米韓FTAでは28万人の雇用を創出すると語ったが、実際には7万5千の雇用が消失した。
 これらはすべて、多国籍企業アメリカに投資するよりも、安上がりな国に投資することが、
 明らかであるから、必然的に起きたことである。

第2の理由:
 政治においては、様々な集団がどのような人々の側に立っているかを知ることは、
 常に興味深く重要であり、誰がTPPに賛成し、誰がTPPに反対しているかを知ることは、
 私たちに多くの示唆を与えてくれる。
 アメリカ国内の工場を閉鎖し海外に移転を進めてきた多数の企業を含む、多国籍企業がこぞって、
 TPPは素晴らしいアイデアであると考えている。
 なぜTPPが彼らにとって素晴らしい計画であるのか、TPPによって、企業がこれまで以上に、
 アメリカ国内にある工場委を閉鎖して海外の低賃金の国々に移転できるようになるからだ。
 そしてもう一つのグループは、製薬会社です。
 アメリカの製薬会社は、処方薬剤を世界一高い価格で私たちに販売していますが、
 TPPによって、貧しい国々を含む世界中の人々に、彼らの製品を高い価格で売ることができる、
 と考えているから、TPPに賛成しているのです。
 そしてウォールストリートも、TPPが大好きです。
 わずか数年前、ウォールストリートの貪欲で無謀で違法な行為が、大恐慌以降で最大の景気後退を
 引き起こしたにもかかわらず、ウォールストリートがTPPに愛着を寄せる理由は、TPPによって、
 彼らの怪しげで複雑な金融商品を、より簡単に世界中に売りつけることが可能になるからです。

 そして全米すべての労働組合、2000万人以上のアメリカ人労働者を代表する労働組合が反対し、
 「ファストトラックによる貿易協定(TPP)は、雇用の減少、賃金の低下、中間層の衰退をもたらし、
 ニクソン政権以来のNAFTAのような貿易協定は、雇用創出の手段と聞かされてきたがウソだった。
 これらの貿易協定は、世界の巨大企業によって、世界の巨大企業のために書かれたもので、
 貿易協定の主な目的は、貿易とは無関係であり、企業が海外に投資をすることを簡易にし、
 グローバル経済に対する影響力を増大させるためのルールを定めること」だと言っている。
 また自然保護のための有権者行動連盟、シェラクラブ、天然資源防護協議会、憂慮する科学者同盟
 地球の友、グリーンピースのようなわが国の主要な環境及び科学団体が、TPPに反対しています。
 「貿易協定が、社会や、労働者や国民の健康や、環境を益するものとなるようにする連邦議会
 能力に制限を設ける法律」と判断して、これに反対するよう呼びかけているのです。
 さらには、米国長老派教会、合同メソジスト教会、シスターズオブマーシーのような宗教団体も、
 貿易促進権限に反対しており、「貿易は、他の経済活動と同様に、人々を貧困から引き上げ、国家が、
 国民の健康や福祉や、この地球を守る能力を担保する手段でなくてはなりません」と言っている。

 片や膨大な利益をむさぼる多国籍企業、ウォールストリート、製薬会社がTPPに賛成し、
 他方には、数百万のアメリカ国民を代表する労働組合、数百万のアメリカ国民を代表する環境団体、
 そして宗教団体が、TPPに反対していると言うことです。

第3の理由:
 これは人々がほとんど注意を向けてこなかった条項なのですが、
 ISDS(投資家対国家の紛争解決)条項と言うものがあります。
 これは多国籍大企業が、アメリカ合衆国のみならず世界中の国家や州や地方自治体を、
 それらの政府が企業が見込む将来の利益に損害を与えるような立法行為を行った場合に、
 訴えることができることを意味します。これこそTPPの本質を示します。
 TPPは、賃金を引き上げたり、雇用を創出したりするためのものではなく、
 ひたすら企業の利益を守るためのものなのです。
 信じがたいことに、TPPが目論んでいるのは、世界中の地域共同体、アメリカ合衆国の各州、
 アメリカか他国かを問わず各国政府の基本的な民主主義が、多国籍企業の利益を侵害する場合に、
 民主主義を侵害することなのです。
 世界中で民主的に選ばれた政府の仕事は、最大限、私たちに投票した人々のニーズを代表すること
 であると考えていたのに、間違っていたことになる。なぜなら、
 民主的に選ばれた人々が法律を可決し、医療制度や環境を守るためのその法律が多国籍大企業の
 将来の利益を侵害するならば、提訴され、その国が莫大な罰金を支払わなければならなくなることを、
 この法案が示しているからです。
 医療や環境のみならず、民主主義の基本的な理念そのものに対する、なんという攻撃なのでしょうか。

 私たちの仕事は、企業の将来の利益を気づかうことではありません。
 私たち上院の仕事は、アメリカ国民のニーズを気づかうことです。
 それが選挙で選ばれた世界中の政府が当然なすべきことなのです。

 類似した条項(ISDS条項)に基づいて、世界中で既にどんなことが起きているのか、
 また、TPPに賛成票を投じた場合に、どんなことが起きうるのか、具体例を示させていただきます。
 タバコ会社フィリップ・モリスは、表示義務を巡ってオーストラリアやウルグアイを訴えています。
 子どもたちが喫煙のニコチンによる、心臓病や癌や肺気腫などから身を守るための警告表示に対して、
 「我々はウルグアイの子どもたちにタバコを売りたいのに、それを困難にする法律を作ることで、
 我々の将来に見込める利益を台無しにしている」と提訴したのです。
 癌の予防をめぐるこの問題は、単なる医療問題ではなく、民主主義の根幹に関わる問題です。
 またフランスの廃棄物処理会社ヴェオリアは、フランス・エジプト二国間投資協定に基づき、
 労働法を改正し最低賃金を引き上げたエジプト政府に対して、1億1千万ドルの損害賠償を求めて
 訴訟を起こしているのです。
 しかし私は、エジプトに限らず、地球上のあらゆる国の政府は、正当な理由があると彼らが考えるなら、
 企業から訴えられる心配を抱くことなく、最低賃金を上げる権利を持っていると考えます。
 TPPの下では、世界中のどの政府も、アメリカ合衆国のどの州も、たとえば、環境委問題に熱心な
 私のバーモント州が環境に関する法律を制定した場合、大企業が訴えられるようになったのです。
 これはバーモント州や、ジョージア州や、他の州の行政行為を侵害するものです。

第4の理由:
 アメリカのみならず世界中で私たちが直面している医療危機の一つは、処方薬剤の高額な価格です。
 医師から処方箋を受け取るアメリカ人の25%が、処方された薬を購入する金銭的余裕をもちません。
 世界の多くの国では、さらに酷い現状があって、TPPが可決すると、製薬会社が彼らのブランド名を
 冠した薬品を、より安価なジェネリック薬品として製造できなくなる。
 その結果、世界中の貧しい国々では、十分なお金をもたない人々の薬の価格に悩まされることになる。
 国境なき医師団からは、
 「TPPは、発展途上国の医療アクセスにとって、これまでで最も有害な貿易協定になる」と言われている。