ロビンソン・クルーソー物語

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お金には利子が付くもの、とする考え方は、
今日誰も疑いませんが、必ずしもそうとは限りません。
もともとイスラム教では、利子を禁じていますし、
日本でも、利子が当たり前になったのは比較的新しい。
いわゆる貨幣通貨が、流通して以降のことなのです。

そんな利子こそ、今日の経済を混乱させている。
と主張して、利子の問題を提起したのがゲゼルであり、
彼の主張する新しい通貨は、自由通過として知られています。
彼の「自然的経済秩序」に納められた、一つの逸話、
ロビンソン・クルーソー物語」は、ケインズも絶賛した、
と言われているので、その内容を紹介しておきましょう。

ロビンソンは無人島に流れつき、自給自足の生活をします。
島の南側に家を建てて、山向こうの北側には食料作物の畑を作り、
なんとか暮らしていけるのですが、山越えがきつい。
そこで山越えをしなくてもいいような、迂回路を考えて、
道路を作ろうとしますが、そのためには3年の月日が掛かる。
そこで3年分の蓄えを必要として、食料や衣類の資本を蓄えます。

そこへ小舟が難破して島へ辿り着いた訪問者が一人やってきて、
「最初の収穫ができるまで、あなたの蓄えを貸して欲しい」と言う。
ロビンソンは資本を貸すことで、利子生活ができると思い、
これを承諾しますが、訪問者は利子は払わないと言います。

ロビンソン
「でも、あなたが利子を払わないなら、いったいどうして、
 私が蓄え(資本)を貸すと思うのですか」
訪問者
「儲かるからですよ。あなたは利益を得るのです」
ロビンソン
「蓄えを無利子で貸して、利益を得るなんて、見当がつきません」
訪問者
「私はさしあたり、衣服が必要です。衣服の蓄えはありますか?」
ロビンソン
「その木箱には、衣服がたくさん詰まっています」
訪問者
「3年間も衣服を保管するには、シミ除けや風通しが必要で、
 ネズミにもかじられるし、すぐに痛んでしまうでしょう」
ロビンソン
「それならどうすればいい、と言うのでしょう」
訪問者
「私に衣服を貸してくだされば、必要なときにお返ししますし、
 その時はシミも痛みもない新しい状態で、お返ししましょう」
ロビンソン
「なるほど、それなら無利子でも私には利益がある」

こんな感じで、種まき用の小麦や小屋を建てる材木や、
農作業の道具まで、すべて無利子で借りることに同意してもらいます。
さらにマルクス資本論にも立ち入って、マルクスの信奉者は、
貨幣の本質をその考察の範囲から除外する、という過ちを犯している、
と諭し、商品を超えた貨幣自体が持つ権力性に言及します。

モノにはそれぞれ特有の原価率があって、例えば新聞のように、
明日になれば無価値になるようなモノもあれば、耐久消費財のように、
息の長いものもありますが、いずれも劣化し老化し痛むのです。
加えてモノには保管費用が掛かり、コストが掛かるのだから、
無利子でも借りてもらえれば、それだけで利益でさえある。
しかしお金が介在してくると、事情は一変するのです。

こうした貨幣の問題と利便性を、分けて考えるところから、
ゲゼル独特の概念が生まれ、それが自由通貨となって生まれます。
利便性と利子の問題を分けて考え、利便性を残したままで問題をなくすために、
自然界と同じように減価する通貨を考えたのが、自由通貨なのです。