「ザ・トゥルー・コスト」

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この映画の簡単な紹介を見たときは、単なるファッション業界の裏側の話で、
アジアの下請け産業がいかに過酷かを、描いた映画だろうくらいに思っていました。
ところが実際に見てみたら、そんな生やさしい内容のものではなく、
人類の未来をも脅かすのではないかと思われる、現代産業の真実が描かれている。
表面的には華やかなファッション業界は、僕らの全く知らないところで、
人権を無視するどころか、大勢の人間の生き死ににまで関わっていたのです。

何年か前にバングラディッシュダッカで起きた、縫製工場だったビルの倒壊は、
死者だけでも千人以上、負傷者にいたっては数千人という悲惨なものでした。
この事件をきっかけにして、アンドリュー・モーガン監督はファッション業界に関心を持ち、
なぜこのような事故が起きたのか、事件そのものの構造を解明して見せてくれます。
それは単なるファッションの問題と言うより、現代のあらゆる産業に見られる、
グローバル化によるアウトソーイングで、何が起きているかの真実の物語なのです。

世界中の多国籍企業は、日本のアパレル産業も例外ではなくコスト削減を求め、
少しでも安いコストを求めて、中国、タイ、ベトナムなどへ工場を移してきました。
そして現在行き着いている一つが、バングラディッシュとなるわけですが、
これはさらにやがて、南米やアフリカにも波及しないとも限りません。
そしてもっとも弱い立場の人々を、ダッカの事故現場のような環境で働かせ、
生きるのがやっとの条件を受け入れる人たちが、グローバル化を支えているのです。

そもそもどうして世界中の消費財は、価格が安くなり続けているのか、
特にファッション業界において、価格の低下は驚くべきものがあるようです。
以前だと余所行きと普段着が、それぞれ数着あれば事足りていた暮らしだったのが、
今では毎年何着もの衣服を購入して、使い切ることなく廃棄してしまう。
そのような消費行動は昔は不道徳だったのに、今では誰でも当たり前になって、
その結果として世界中にどれだけの環境汚染が広がり、人権が踏みにじられているか。

さらにこの大量生産のために、多くの原料を必要とするようになって、
世界中の農作物の中に、大量の化学薬品と遺伝子組み換え産物が広まっている。
その結果僕らは知らないうちに、肌を通して様々なストレスを感じるようになって、
得体の知れない現代病の、一つの要因になっているかもしれないと思われる。
そしてこんな業界にさえ、モンサントの手が深く絡んでいることを知ると、
もはや自分の国や家族の健康さえ、守るのは容易ではないと思い知らされるのです。

世界中に利益を求めて展開する多国籍企業は、人々の生活を豊かにすると言って、
大量の商品やサービスを提供しながら、あらゆる汚染をまき散らしている。
しかも合法的にやっているので、国々の法の罪には問われることもないのですが、
間違いなく弱者を追い詰め、行く先々で問題やトラブルを引き起こすのです。
経済グローバル化の「トゥルー・コスト」とは何か、僕らはもう一度考えることで、
未来にどのような暮らしを求めるのか、再確認する必要があるのです。

たった一本のこの映画を見たことで、世界の今がわかる気がしました。
僕らは今月21日(土)にいのくち椿館で、この映画の上映会を開催する予定です。

=====「ザ・トゥルー・コスト」上映会=====
日時:5月21日(土) 14時~、19時~ 2回上映
        昼の上映会終了後に、フェアトレード・カフェを開催します。
        またラオスからの報告や、物販もある予定です。
場所:いのくち椿館(南砺市宮後188)
        電話 0763-64-2202
料金:一般1000円(前売り800円)、学生800円(前売り700円)
        いのくち椿館に電話で申し込めば、前売り料金になります。
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