「ふるさとがえり」と林監督

イメージ 1
 
ちょうど南砺市では、田中市長が誕生した頃に、
恵那市では、一つの映画企画がスタートしていました。
平成の大合併によって、多くの新しい行政区ができましたが、
南砺市でも8町村が合併しながら、まとまりに欠けており、
地域の独自性を競うばかりで、南砺市としての一体感は希薄でした。
同じような危機感が恵那市でもあって、恵那市商工観光課は、
映画作りによって、住民の一体感を作ろうと考えたのです。

しかもこの企画は、どこかのプロダクションに一任して、
ありきたりの映画を作るのではなく、市民協働で制作するために、
「えな“心の合併”プロジェクト」を立ち上げて、スタートしました。
このプロジェクトは、やがて「えな映画実行委員会」となって、
まずPRムービーの制作に始まり、協賛資金の募集をして、
様々なスタッフから出演者まで、大勢の地元住民が参加しています。
そしてメインキャストには、プロの有名な役者が顔を揃え、
まちを挙げての、映画作りが始まったのです。

驚くのは脚本作りの段階から、大勢の市民が集まって、
何年もかけて議論して、それをプロがまとめていったとか。
市民活動のレベルでは、気の遠くなるような根気のいる作業を、
林弘樹監督は、粘り強く形にしていったのでしょう。
映画の持つ力を地域づくりに活かして、人々の思いを乗せ、
出来上がった作品は、映画としての質も高く良質の作品でした。
それを昨日見せていただき、林監督の話も聞くことができたのです。

地方行政の地域づくりは、経済的なことに気を取られすぎて、
町の流出人口を防ごうとすれば、企業誘致とかが検討されますが、
人々にとって大切なのは、おカネの安定収入ばかりではないのです。
どんな場所で、誰とどのように生きていくかを考えるとき、
おカネよりはむしろ、人間性や人との絆が大切であり、
絆に根を下ろすことができれば、なんとか生きていけるものです。
僕自身も自然農を通じて、多くの人の生き方に接して関わり、
生きる場が開かれてきたと、感じているのです。

上映後の林監督と田中市長のお話も、興味深い内容で、
林監督が「未来を切り開くためには常識を打ち破る必要がある」
と発言されていたのは、強く納得するところでした。
大勢人口がいた頃のまつりやイベントも、人が少なくなれば、
すべてを維持しようとするのではなく、切り捨てることも必要です。
何を捨てて何を育てるのか、市民全体が参加することで、
それだって、市民のアイデンティティを作るかも知れません。