「21歳男子、過疎の山村に住むことになりました」

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ちょっと長い題名ですが、図書館で見つけて手に取ってみました。
特に「若い人に贈る読書のすすめ」、とカードが付いていて、
少し中を立ち読みすると、面白そうなことがいろいろと出てきます。
高齢者福祉サークルに所属していた、法政大学福祉学科の学生が、
付き合っていた彼女に、振られたことをきっかけにして自己分析をする。

「大学入学時に、もともと取り組みたかったことはなんだ?
 学生としての自分の時間の過ごし方は、これでいいのか?」
と考えて、自分が卒業までにやっておかなくてはいけないことを、
探し求める日々が始まり、ゼミの先生に現場へ出たいと申し出ます。
そこで紹介されたのが、「地域おこし協力隊」と言うもので、
彼は大学を休学して、この活動に参加していくのです。

最初は1年間のつもりで、岡山県美作市地域おこし協力隊に入りますが、
最終的には休学期間を2年、復学しても東京往復でこの活動を続け、
無事に大学を卒業しても、会社組織に就職することなくこの地域に入ります。
地域おこし協力隊の期限は3年なので、4年目は自力生活ですが、
その頃には生活費を稼ぐノウハウも身につけて、独立生活が始まるのです。

僕らの南砺市にも、似たような制度はあると聞いていますが、
僕自身が町中に住んでいますから、こうした人との接点はありません。
特に南砺市の場合は、平地部と山間部は別れているために、
山間部に入った人が何をしているか、よくわからないのが実情なのです。
だけどこの本を読んでみると、入った集落の人と接点を持つことも、
努力して積み上げないと、なかなか簡単にはいかないことがわかります。

最初は草刈仕事から始まって、やがて古民家の再生とかも手掛け、
自分の役割として、人と人を結びつける仕事に力を注ぐようになっていく。
彼の姿を読んでいると、自分にも身に覚えのある体験や気持ちがあって、
今の若い人も、企業就職ではない価値感で生きようとする人がいて嬉しい。
そんな事を考えながら読んでいると、あらためて考えさせられることも、
新鮮な視点で書かれていたから、最後まで夢中になって読みました。

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 一日の自分の動きを決めていくことは、一ヶ月先、一年先、十年先、
 つまり自分の人生をどう生きるかを決めることが出来ると言うことで、
 その決断は他人のせいにはすることができないものなのだけれど、
 自分で決めることができる楽しさを知ってしまったら、
 ただ指示を待つだけの人生なんて選ぶことができない。
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まったくその通りだと思うのですが、僕が学生の頃には、
迷いが多くて、ここまでは考え方が定まってはいませんでした。

大学は決して就職予備校ではなく、自分は人生をどう生きるのか、
自ら考えて決めるための、素養と能力を高める場所であるはずです。
今の学生も自ら悩み、こうした選択肢もあることを知って、
より豊かな暮らしへと進めば、社会全体が豊かになると思うのです。
山里へ入って暮らすのは、決して苦行なんかではなく、
人間とは何かを知って、豊かに暮らす一つの手段の筈なのです。