ウクライナ情勢と安倍政権

イメージ 1
 
先日冬季オリンピックが行われた、ロシアのソチから近く、
同じ黒海に面したウクライナにおいて、大きな混乱が起きています。
このウクライナという国は、旧ソ連邦が解体したときに独立し、
その後は親露政権によって、ロシアと深い関係を保っていました。
しかし2004年の大統領選挙で、親露派ヤヌコヴィチさんが当選するも、
選挙の不正に抗議するデモが拡大して、最高裁判所が再選挙を裁定。
あらためて行われた選挙では、親欧米派ユシチェンコさんが勝利して、
これを西欧では、オレンジ革命とも呼ぶようになったのです。

ところがこの再選挙では、米国からの介入があったとの噂が絶えず、
2010年の大統領選挙では、ヤヌコヴィッチさんが改めて当選しますが、
それまでにウクライナの財政悪化が進み、政府は自立が困難でした。
もともとロシア寄りのヤヌコヴィッチさんは、ロシアに援助を求めて、
ロシアもこれを了解しますが、前政権で膨らんだ親欧米派の人は、
これを不服として大規模なデモを仕掛け、彼を国外に追いやります。
しかし「敵の敵は味方」みたいな、反露勢力の実情は不安定で、
中には民族主義や反ユダヤ勢力も含むので、何が起きるかわかりません。

市民デモが政権を倒したと聞けば、つい正しいことのように感じますが、
ウクライナの首都キエフは、どちらかと言えば西側にあって、
民族的にも思想的にも、新欧米派の多い地域だと認識しておく必要がある。
同じウクライナでも東側では、親ロシアの人が多く住んでいますから、
大統領選挙でも、常に僅差の接戦になる土壌があるのです。
したがってどちらが大統領になっても、国民の意思統一は難しく、
欧米諸国はそこに付け込んで、自分たちの利益を増やそうとするから、
余計な不正まで活発になり、泥沼のような情勢が進んでいるのです。

親欧米ユシチェンコ政権では、ロシアから安く資源供給を受けながら、
それをヨーロッパへ横流しするばかりで、ロシアへの支払いは滞っていた。
しかしロシアも、バルカン半島に海軍の重要な拠点があるので、
ウクライナとの関係を絶つことは出来ないし、租借権を廃止されては、
自国防衛の軍事上に支障があるので、容認することは出来ません。
こうして過去に世界大戦の引き金となった、バルカン半島の民族問題が、
またしても世界情勢を二分する、そして実際にはもっと複雑な、
紛争への道を歩み始めているのではないかと、心配になるのです。

今のところウクライナでは、トゥルチノフ大統領代行によって、
全軍に対し戦闘準備態勢に入るよう命令し、予備役の招集を始めたようです。
しかし動きの早かったロシア軍は、戦闘をせずに要所を守ってますし、
アメリカのオバマ大統領も、軍事的な展開を口にしてはいません。
それでもアメリカ軍が黒海での展開を始め、ロシア軍がキューバ海域に、
一定の即応戦力を進めているとの、情報も広がっているようです。
今は不測の事態が起きないように、速やかな解決策を模索して、
お互いに納得できる状態を、早く見出してほしいと思います。

日本では安倍政権が、すぐにはアメリカの方針に乗っかることなく、
ロシアだけを非難牽制するのではなく、双方に自制を求めているようです。
これがもしも野田政権のような、アメリカの傀儡政権であったなら、
すぐにアメリカの求めに応じて、ロシア包囲網に同調したかも知れません。
幸か不幸かアベノ独裁は、国内を好きなように掌握出来ている自信から、
アメリカに対しても、強い態度で自国の利益を主張できるのでしょう。
今年の4月にはオバマ大統領を、日本に招くスケジュールがありますが、
秋にはプーチン大統領も来日するので、双方への自制を呼びかけるのです。