「ムーンライズ・キングダム」

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12歳のサムとスージーが、恋に落ちて駆け落ちする。
なんとも荒唐無稽で、夢物語のようなお話しですが、
ハチャメチャでありながら、見ていると心が惹かれる。
なんともチャーミングで、キュートとしか言いようのない、
マンガよりも漫画的な実写映画で、楽しめる映画でした。

両親と弟3人の6人家族で、長女のスージーは家族に反抗的で、
ずっと孤児のサムは、里親元からボーイスカウトのキャンプ中です。
この二人が知り合って手紙をやりとりし、密かに恋心を育むのですが、
その挙げ句に、二人で駆け落ちするところから話が始まります。
最初は何がなにやらよくわかりませんでしたが、わからなくたって、
いたるところに面白いペーソスがあって、飽きさせません。

舞台は夏休みの小さな島で、ある種のピーターパンのような、
夢の世界へ飛び立つような、駆け落ちで始まるドタバタですが、
そこはあくまでも有りそうで無さそうな、なんだか切ない。
自分も子どもの頃に戻って、もう一度やり直せるなら、
こんな冒険をしてみたい、と思わせる楽しさがあるのです。

監督は「ダージリン急行」の、ウエス・アンダーソンで、
ブルース・ウイルス、ビル・マーレイエドワード・ノートン
と言ったハリウッドのスターが、脇を固めています。
主役はカーラ・ヘイワードとジャレッド・ギルマンですが、
その凛とした態度は、見ているのが嬉しくなるくらい、
子どもの真っ直ぐさを貫いて、妥協しないのが見ていて楽しい。

考えてみれば、真っ直ぐな12歳の男の子と女の子が恋をして、
家を出て社会を捨てて、駆け落ちするなんてこと自体、
なんだかありえない、可能であればやってみたかった夢でしょう。
監督も自らの夢のように、現実を越えて映画が描かれるから、
僕らは難しいことを言わずに、その夢の世界へ誘われるのです。

日本ではあまりヒットしないのも、わかる気はするのですが、
愛の逃避行に走ったサムとスージーを、家族やボーイスカウトが追う。
それ自体が大冒険で、そこへ大きな嵐が襲ってくるのです。
洪水有り、落雷有り、追っ手あり、だけど味方も現れるから、
二人はどこまでも逃げて、避難先の教会で追いつめられるのですが、
理解してくれる大人によって、最後は救われるストーリーでした。

場面のいたるところで、夢のようなシーンが積み重ねられ、
僕らはどこまでも、その夢の中へ囚われて冒険に向かうのです。
大仕掛けの活劇大冒険ではないけど、誰にでも夢見られる、
12歳の恋の話で、こんな映画が作られのを見ると、
映画にはまだまだ、多くの可能性がありそうに思われました。