亡骸(なきがら)の層

イメージ 1
 
自然農を続けていると、亡骸の層が出来てきます。
いわゆる虫や草が死んで、土になっていく層のことで、
畑ではわかりにくいかも知れませんが、田んぼでは、
年に一度の稲以外は全部雑草なので、比較的わかりやすい。
写真は今年の田んぼの様子ですが、稲が植えてある間に、
草の地帯があって、これを刈り取るのが手入れです。

10年以上自然農をしていると、この層が5㎝ほどあって、
その下の硬い土とは違うから、比較的容易に剥がれます。
したがって草刈りの時は、この層の境目に鎌を入れて、
魚の皮を剥ぐように引いてやれば、簡単に剥がれるのです。
と言うのは理屈であって、これを実際にやってみると、
よほど鎌を研いでおかないと、すぐにつっかえてしまう。

雑草だって根を伸ばすので、硬い層に根ざすものがあり、
しかも簡単には切れなかったりして、たいそう手こずります。
水田ですから水浸しであれば、乾いているよりは柔らかい。
そこで鎌を入れて切れないところは、引っ張って外してしまう。
そうすれば無理なく取れますが、問題はその草の量でしょう。
亡骸の層は養分が豊かなので、雑草の量も半端ではないのです。

写真ではわかりにくいかも知れませんが、稲を植えてある、
ラインとラインの間に広がる、密度の高い草がわかるはずです。
現代の薬漬けの田んぼでは、こんなに草は生えてきませんし、
生えてきても、ヒエとかペンペン草程度でしかないのです。
自然農の田んぼと近代農業の田んぼでは、これほど土が違って、
現代人は、草も生えない疲弊した土で作った米を食べているのです。

もちろん疲弊したままでは、稲は十分には育ちませんから、
人がたっぷり肥料を入れて、草や虫は薬剤散布で駆除します。
これを繰り返せば、土は次第に生命力を奪われていくでしょう。
そんな土で作った米や野菜は、食べ物として問題はないのか?
現代人の様々な病気は、食べ物に寄るところが大きいと、
しばしば指摘されるのは、こういう事ではないかと思います。

自然農の場合には、この草を寝かせて土に戻してやるので、
やがて朽ちて土に還る、これが亡骸の層として作物を育てます。
いわゆる山の土が、年を経るごとに豊かになっていくのと同じです。
ここには雑草の刈れたものばかりではなく、カエルやオケラなど、
小動物の死骸もたくさんあって、動物性肥料も足りています。
このバランスこそ、自然農が求める自然なバランスなのでしょう。