増える期日前投票
忙しい合間を縫って、選挙の期日前投票に行くと、
数人のお年寄りが、ワンボックスの車から下りていました。
ワイワイがやがやと楽しそうですが、行き先は投票所で、
国政選挙の期日前投票に、そろって出向いてきたようです。
数人のお年寄りが、ワンボックスの車から下りていました。
ワイワイがやがやと楽しそうですが、行き先は投票所で、
国政選挙の期日前投票に、そろって出向いてきたようです。
僕の方が後だったので、なるべくお年寄りの邪魔をしないで、
その様子を見ていましたら、ひとり中年の女性が全員を引率しています。
近所のお年寄りたちに声を掛けて、投票所に連れてきたらしい様子は、
選挙における棄権をなくし、投票率を上げたい思いも伝わってきました。
「せっかくの投票権を、使わなくちゃ困るでしょ」
と言いながら、5人のお年寄りを引率しているのです。
期日前投票の宣誓書を書き終わった人から、投票用紙を受け取って、
投票する人の名前を書くコーナーに、1人ずつ入って行きます。
すると例の引率者が、脇から小さな声を掛けていました。
「誰に投票するか、間違えたらいかんよ!」
小さい声と言っても、僕にも聞こえましたから、
名前を覚えられないお年寄りを、親切にサポートしています。
投票所の係官は、コーナーの目の前に張ってある名前を指し、
「そこに書いてある人の中から、1人選んで名前を書いてください」
と説明しますが、お年寄りはその名前を見てもピンと来ないで、
「誰やったか、忘れてしもたわ」とつぶやいています。
すると引率者の女性は、お年寄りに聞こえるように声を大きくして、
「さっき教えたやろ!、その通りに書けばいいから」
お年寄りはポカンとして、忘れてしまったらしいのです。
すると中年女は、少し苛立って声を大きく言いました。
「だから忘れないように、あんたの手に書いておいたから、
その通りに書けばいいから、間違えんといて!」
お年寄りは、自分の手に名前が書いてあるのを思いだし、
なんとかその通りに書いて、記入所を出ていきました。
これっていいのかな?と思いながらも、本人がいいのであれば、
他人がとやかく言っても、始まらないような気もしました。
しょせん自分で書くと言っても、誰が良いかを選ぶ時に、
その人の主張や人格や、所属政党のマニュアルまで見る人は希で、
たいがいはなんとなく、よく知っている人の名前を書くのです。
親切に連れてきてくれた人の指示で、書くのもまた同じこと。
そもそも連れてきた中年の女性だって、どこまでわかっているのか、
誰かに頼まれて、言われるままに候補者の名前を指示するなら、
中年女もお年寄りも、どこに自由意志の投票行動があるのでしょうか?
しかも「それでいい」と思っているなら、それこそ自由意志で、
その結果が憲法改正になろうと、知ったこっちゃないのでしょう。
軍隊と戦争の放棄をやめて、自ら人権を放棄するのですから・・・
何が違うのかさえよくわからない、ずらりと並んだ政党名を前に、
いったい自分が何に投票しているのか、わからなくなりました。
小泉政権時代に、郵政だけを考えて投票した結果が、
思いもしなかった政策が次々に打ち出されて、大変な目にあった。
それを思い出すと、全員を落としたい気持ちにもなるのです。
どうせ何も解決しないなら、余計なことをしない政治家がいい!
しかしながら、「私こそは何もしません」と言う政治家もいない。
希望の持てるような政治思想もないままに、余計なことばかり、
よくもまあ次々にやるものですから、ウンザリしてしまうのです。
数人のお年寄りと中年女は、投票を終えて満足そうに帰っていきました。