「死と神秘と夢のボーダーランド」

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神経科学の研究科で、国際的リーダーとされる、
ケンタッキー大学の神経学教授、ケヴィン・ネルソンの著書、
「死と神秘と夢のボーダーランド」を読んでみました。
~死ぬとき、脳はなにを感じるか?~との副題でしたが、
書いてあることの多くは、神秘体験の科学的考察です。

いわゆる霊体離脱など、オカルト現象と呼ばれるものは、
僕が自分で何度か体験しているので、多いに興味があるのです。
コリン・ウイルソンの著書、「アウトサイダー」以来、
何冊もの本を読んでいますが、この手の本は何を信じればいいか、
一般的な常識として認知されている知識は、意外と少ない。

その最大の理由は、オカルト現象を心の動きによるものとして、
科学的に考察するような、客観的な学問が無かったからでしょう。
現実はあるのに、その現実を科学はうまく説明できなかったのですが、
近年の医学技術の発達で、客観的事実が研究できるようになると、
こうした現象の多くが、科学的な考察の舞台に上がってきたのです。

彼はその研究結果として、脳の働きを運動系統の神経と、
知性的な判断をする神経とに分けて考え、さらにそれを繋ぐ、
間脳こそが、臨死体験などに深く関わっていることを突き止めます。
レム睡眠と深い睡眠との交代を引き受ける、スイッチとしての間脳が、
うまく機能しなくなったとき、臨死体験などの超常現象が起きる。

しかしそれではどうして、こうした体験をした人の多くが、
至高の神秘体験として感じ、その後の人生まで変わってしまうのか?
この辺の事情に関しては、推測による説明しかありませんが、
例えばユング臨死体験をしたことで、その後の人生が大きく変わり、
ドストエフスキーは、強い宗教的信念を持つようになったのです。

著者はさらに、こうした実体験と言える臨死体験や、
心理的ないくつかの病気は、例えば短時間に長い夢を見る能力や、
霊的体験と呼ばれる多くのものに、繋がっていると言うのです。
高みから自分を見下ろす体験は、実は珍しいことではなく、
多くの人が体験しながら、活かせていないと言うことでしょうか。

最新の現代科学は、脳の活動にまで深く入り込みながら、
神聖なものとの一体感が、どうして生まれるのかはわからない。
だけど一人一人の内面的なものが、神秘体験と繋がる時に、
神聖な何物かとの、大いなる一体感を味わっているのですから、
臨死体験は恐怖であるよりも、明るい神秘となるのでしょう。