ファイティング姫

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 一ヶ月検診で外出して以来、姫はともかく、
妻は何かと外出して、息抜きをしたいようです。
と言っても、まだ遠出は厳しいと感じて、
姫を連れて出掛ける時は、僕が運転手ですし、
図書館や近所の買い物などは、一人で行きます。
つまり僕と姫が、ふたりでお留守番です。

普段は仲良し父娘ですが、困るのはおっぱいで、
おっぱいが欲しくて泣き出すと、僕は情けなくも、
どうにも出来ないで、ひたすらあやすしかありません。
そこで妻が一人で出掛ける時は、授乳を済ませ、
次の授乳まで、2時間以上は大丈夫の時にしてもらう。
そうすれば理屈では、おっぱい無しでも何とかなる、
と言うことですが、実際はそううまく行きません。

不思議なのは、姫とおっぱいが連動しているようで、
姫がおっぱいを欲しがると、妻の乳房が張ってくる。
これは近くにいなくても、連動するから凄いのですが、
実はこうしたことを、文学的に扱った作品に、
僕が好きな泉鏡花の、「歌行燈」がありました。
乳飲み子を抱えた女が、好きな男と逢い引きをする、
そこで気持ちが高ぶった時に、赤ん坊が泣き出すのです。

女はハッとして、赤ん坊を裏切れないと思い、
男を遠ざけてしまうのですが、このくだりが切ない。
電気の明かりもない部屋で、若い男と女が逢って、
お互い気持ちが引かれながら、隣の部屋にいる赤ん坊が、
やめてくれ!とばかりに、大泣きしてしまうのです。
とまあこれは明治文学の話ですが、現代の母娘は、
妻はなんとかして、自分の自由時間を増やそうと思い、
姫は少しでもおっぱいにかじりつきたくて、泣きわめく。

妻の方が人生経験も長く、2時間くらい授乳しなくても、
何も問題がないとわかったので、姫が泣こうとわめこうと、
「まだよ!」とか言いながら、時間間隔を取るのです。
これを繰り返すことで、姫がおっぱいを欲しくなっても、
一定時間は我慢してもらえる、訓練をするのです。
そして撮ったのが、このファイティング姫の写真です。
左上の方向に妻がいて、双方が手の内を探りながら、
「こいつ何考えてるんだ!」って感じでにらみ合います。

ああいえいえ、どうあがいたって妻の方が強いので、
姫は従うしかないのですが、姫の闘う姿勢がすばらしい!
圧倒的に強い妻に向かって、気後れすることもなく、
手振りまでファイティングスタイルで、堂々たるものです。
対等な態度でにらみ合うから、僕なんかたじろぎます。
母娘の戦いの場に、男なんて無力なものですから
早く平穏に、仲良くなるのを待つばかりなのでした。

実際に仲直りは早くて、僕がどぎまぎしてる間に、
気が付けば抱き合っていて、お互いに愛し合っている。
僕は安心して姫に頬ずりして、姫の健闘を称えます。
こうして妻は、一歩ずつ自分の時間を取り戻し、
また少しでも多く、自分の自由を手に入れようと、
情報誌を読みふけりながら、姫をあやしているのです。

あ~いや、これは創作コーナーですので・・・(^_^;)