直接民主主義へ

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昨年の大きな出来事と言えば、3.11の大地震津波原発事故、
と思い出す人は多いでしょうが、世界へ目を向けるならもう一つ、
チェニジア革命に端を発した、アラブの春が挙げられるでしょう。
その最初の国であるチェニジアで、思想的なリーダーだった人の一人、
Slim Amamou さんが、日本の渋谷でインタビューを受けている様子を、
インターネットで見ることが出来たので、その感想を述べておきます。

いかにも革命家風の風貌で、何か特別の才能がありそうな人ですが、
彼の話はとてもありふれていて、納得のいく内容が多いのです。
たとえば情報操作によって、都合の悪いことを隠蔽する政府に対して、
直接出掛けていって見て、その様子をインターネットで配信すれば、
人々はやがてその情報を信じるようになって、信頼関係が生まれる。
政府は人々の信頼関係を破壊して、お互いに不信感を抱かせることで、
自分たちの情報を信じ込ませていたから、これが逆転したのです。

特に当時のチェニジアでは、失業率が異常に高くなっていたので、
若い人たちはいつも、ネットの情報に敏感で反応する時間もあったのです。
ただし彼自身は、革命的な動きになる以前に当局に拘束されていたので、
自分たちの行動が、これほどのムーブメントになるとは思っていない。
だけどその間に人々の信頼関係が育ち、大きな力になっていったのでしょう。
このムーブメントはアラブ諸国ばかりではなく、欧米諸国にも及んで、
アメリカでのストリート占拠や、イギリスでの暴動を引き起こしています。

その彼が語る、これからどのような政治形態が必要かという話では、
直接民主主義を掲げ、政治家による間接民主主義ではダメだと言います。
投票による選挙で選ばれる政治家は、勝手に何でも決めてしまうので、
投票したときには望まないことも、自分の判断で決めてしまうから困る。
むしろなるべく多くのことは、直接投票によって決めた方がいいと言います。
現在直接民主制を取り入れている国は、スイスだけかも知れませんが、
新しいテクノロジーで、限りなく可能性が高くなっていることも事実です。

そうした直接民主政治は、ポピュリズムに陥る可能性が高くなると言いますが、
少なくともそれは市民全体の民意であり、間違っていると思ったときには、
自分たちでまた変えることも出来るから、代議員政よりもましだと言うのです。
日本の場合には、一つのシステムや一つの法律でも複雑になっており、
直接民主主義で全部を決めるのは、あまりにも難しい気もしますが、
何か根本的に大切な要件だけを、直接民主主義にすることも出来るでしょう。
大切なのは民意をどのように汲み上げるかで、秩序維持では無さそうです。

徹底的な情報開示によって、今何が起きているかがわかっていれば、
人々は自分の生活のために働くか、それが出来ないときには政府を批判する。
だから政府は少しでも多くの人に働き口を示して、不満を抱かせないようにする。
およそ今の社会の様子を見れば、こうした見解は当たっているように思うけど、
人々はそんなに働きたいのかと言えば、必ずしもそうではないようにも思う。
そもそも働くとは何か? 自分たちの幸せを求めているわけですが、
この自分たちがどの範囲に及ぶのかによっても、大きく違ってくるでしょう。

みんなが幸せにならなければ、誰も幸せにはなれない!と思えるなら、
働くとは自動的に、公共的な福祉的な要素が色濃くなってくるでしょうから、
ただお金を稼げばいいような働き方は、選択しなくなってくると思われます。
そこで協働によるまちづくりが登場するのですが、もしもすべての政治要素が、
協働で出来るようになれば、それこそ直接民主主義のようなものになる。
僕らが目指すところも、Slim Amamou が目指すところと変わりないのです。