「おおかみこどもの雨と雪」

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過去のアニメ映画の中で、特筆すべき面白さだった「サマーウオーズ」ですが、
同じ細田守監督とスタッフが再結集して作られた、日テレ系のアニメ作品で、
おおかみこどもの雨と雪」が気になったので、見に行ってきました。
作品の内容は知らなかったのですが、風景などに富山県の山間地があって、
なんとなく気になっていたし、荒唐無稽な話が逆に見てみたい気になったのです。

この映画は、事前の専門家による前評判はよくなかったようですが、
彼らの意に反して、上映後の人気は少しずつ高まっているようです。
いろいろ理由はありそうですが、一人の女の子が自立して子をもうける過程が、
オオカミ男という設定で、いかにも孤独に出産や子育てをする様子に見えて、
どこかで応援したい気持ちが、少しずつ強くなってきたように思います。

生まれてくる子供に狼の耳があったら、子どもを守ってやれない不安から、
主人公の“はな”は、自宅出産による自然分娩を選んだりしますが、
こうした話は、今までアニメの世界ではほとんどタブーのような話題でした。
だけど実際には、アニメを見る世代が子育て世代を含むようになって、
親子でこうした映画を見ながら、子育ての大変さなどもわかるようになっている。

さらにオオカミ男が早く亡くなってしまうので、その後の子育てを、
残されたはなが、一人ですべて切り盛りしなければならないのですが、
そうした状況さえも、アニメ世代の女性たちに共感を与えるのかも知れません。
都会では暮らせないと思ったはなが、なるべく人の少ない田舎を求めて、
選んだのが富山の風景になるのですが、この田舎の描き方も結構的を得ている。

人の関係を逃れて暮らすと言っても、それではなかなか難しいので、
頑固者の爺さんが中に入って、村人とも親しくできるようになる過程もいいし、
おおかみこどもでなくても、こうした人間関係の葛藤はありそうなのです。
これはファンタジーではありますが、直面するトラブルや問題などは、
むしろ僕らが普通に出会う、様々な実社会の問題ばかりのような気もしました。

自分の生活費を自分で稼ぎながらの苦学生だったはなが、やがて恋をして、
その子を身ごもり出産するのですが、彼は早々と死んでしまって取り残される。
二人の子どもを抱えて、どうやって生きていくのかがこの映画の見所で、
姉と弟の成長を見るはなの視点は、世のお母さんの視点を示してくれます。
つまりこの映画は、現代に生きる一人の女性の成長物語なんでしょうね。