「狡猾の人」

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ノンフィクションライターとして、活躍されている森功さんが、
防衛省を喰い物にした小物高級官僚の大罪を描いた!とされる本、
「狡猾の人」を読みましたが、何とも言えずウンザリしました。
防衛利権軍需産業のザル勘定加減は、多くの人が知るところですが、
この本を読んで見えてくるのは、単なる利権癒着ばかりではなく、
無能な官僚とパフォーマンス政治家の、国民を愚弄する身勝手です。

防衛省の官僚トップであった守屋武昌が、収賄で逮捕されて、
懲役二年六ヶ月の判決を受けたのは、まだ記憶に新しい話でしょう。
彼は長らく事務次官のポストにいたので、森さんのインタビューでは、
普段マスコミのニュースには出ない、米軍がらみの事件など、
簡単には見過ごせない話が、数多く紹介されています。

たとえば米軍の兵士が日本国内で、暴行や強姦など何をしようと、
あからさまになることなく、防衛庁が揉み消してきたことは、
映画「どうするアンポ」でも、実例で紹介されていたことでした。
守屋はインタビューで、そうした話も披瀝したことが書いてあります。
中でも印象的だった事件として、米兵が若い日本人女性に対して、
強姦ばかりか、ナイフで全身の毛をそり落とした上に皮膚まで削いで、
血で真っ赤になっていた証拠写真まで見た、と言うのです。

警察では対処しない米軍兵の犯罪に対して、防衛庁が受け皿になり、
犯人を捕まえるのではなく、プライバシー保護の名目で公表されない。
それどころか日米地位協定によって、日本政府が金銭解決をして、
被害者はそのおカネを頼りに、犯罪に目をつむるしかなかったのです。
この日米地位協定や、普天間基地問題など戦後の重要課題を、
政府も官僚も何一つ解決しないまま、防衛庁防衛省に格上げされる。

このよくわからない防衛利権が、どのようなものであったのか、
本を読んでいると、内実がいくらかわかって更に馬鹿馬鹿しくなる。
実質の値段など関係なく、利権がらみで決まる武器の価格は、
なぜあんなに高額で、防衛費が膨らんでしまうのかの一端が見える。
だけど沖縄に居座り続ける米軍に対して、出ていってくれと言えない、
日本政府とはいったい何なのか?だけは、見えてこないし、
政治家も官僚も、本気で解決しようとはしていないように見える。

まともに運営されていても、軍需産業には批判があるところへ、
日本の防衛省軍需産業は、今もアメリカの喰い物にされて、
日本から利益を吸い上げるパイプとして、利用されているのです。
こんな国防では、いくら予算を多くしても役に立つはずもなく、
利権の駆け引きでしかないと思うと、ウンザリもするのです。

読み終わって、あまり気持ちのいい本ではありませんでしたが、
この本は一人の官僚を知るよりも、日本の防衛省を巡る実情が見え、
残念ながら、よいノンフィクションだったと言うしかありません。
情報開示しない点では、原発も軍事も利権の温床なのでしょうから、
もっと情報を開示して、アメリカとも渡り合える独立国へ、
この国の方向性を示して欲しい!と、思わずにはいられません。
 
 
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