飯田哲也さん講演会

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富山県保険医協会と、核兵器廃絶をめざす富山医師・医学者の会が、
飯田哲也さんを迎えて、市民公開講演会を開催されたので行ってきました。
環境エネルギー政策研究所の所長である飯田さんは、枝野経済産業相により、
綜合資源エネルギー調査会基本問題委員会の、委員に選ばれた人物です。

この委員会は、今まで原発推進派の人たちだけで構成されていましたが、
今回は脱原発派の人も加わったことで、今後判断の成り行きが注目されます。
主催者のパンフレットによれば、今回は委員25人のうち6人が反原発論者で、
中でも飯田さんは、自然エネルギー政策に詳しく原発に批判的な人だとのこと。
どんなお話が聞けるか楽しみで、久しぶりに富山県民会館まで出掛けました。

演題は「3.11後の脱原発自然エネルギー戦略」として、
副題に ~地域から立ち上げる「第4の革命」~ と書いてあります。
原発問題は民主主義の問題と深く関わっているので、期待して聞きましたが、
やはりわかっている人はわかっているので、最後まで安心して話が聞けました。

まず彼は日本の歴史認識として、1868年の開国、1945年の敗戦、
そして今年2011年の原発事故を、それぞれ日本の転換期と位置づけます。
この三つの転換期の中で、さらに戦後から3.11までの間に起きたことを分析し、
1950年代の脱石炭・石油転換を一つのパラダイム・チェンジとするなら、
1970年代には脱公害の考えによって、原発天然ガスへのチェンジが起きた。

その後は1990年代に、一度は脱原発の気運が高まるのですが、
電源3法の成立など政治主導によって、原発推進が強力に押し進められ、
原発地球温暖化の救世主のような宣伝で、エネルギー闇の10年間となる。
さらに当初は20年だった原発の稼働期間を、30年、40年と伸ばして、
ついには今年、あってはならない原発事故を起こしてしまったのです。
しかもこの事故は、でたらめな報告と判断で日本の信用まで失墜させました。

そのでたらめぶりの代表として飯田さんは、事故当日の混乱を話されます。
事故当日の22時35分に公開された、内閣の公開資料によると、
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「2号機のTAF(有効燃料頂部)到達予想 21時40分頃と評価
 炉心損傷開始予想 22時20分頃
 RPV(原子炉圧力容器)破損予想 23時50分頃」
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と、こんな記述があるのですが、これはメルトダウンの予想そのものです。
それにもかかわらず、原子力安全委員会斑目委員長は、菅首相の確認に対して、
「原子炉は破損しない」「水蒸気爆発などしない」と報告し続けたのです。

その後実際に水蒸気爆発が起きたときには、言い訳も出来ずに黙り続け、
さらに驚くべきは、この斑目さん、いまだに原子力政策の要職にいるとか?
飯田さんは戦争当時の軍の暴走に言及し、原発推進との類似まで指摘されました。
誰も責任を取らないどころか、同じ過ちを何度でも繰り返して敗戦した日本。
当事と同じような状況が、今の日本の原子力政策だというのです。

また事故後に騒がれた「スピーディ」の情報に関しても、これが公開されていれば、
少なくとも原発の風下の人たちは、有効に逃げることが出来たはずなのに、
情報がありながら公開されないことで、逃げられなかった人が大勢いる。
こんな犯罪的なことが起きていながら、誰一人刑事起訴さえされていません。
そして日本の政府やマスコミが、メルトダウンを認めたのは一ヶ月後で、
その間にもウソばかりの情報が流され、正しい情報が流言飛語とされたのです。

政府の中枢とも繋がりのある飯田さんの話は、リアルで興味深く、
ネット情報だけではもどかしい肝心な点を、あからさまにしてくれます。
そして今回の話の主要テーマは、犯罪的ウソの暴露ではなく、
すでに現代社会のエネルギー事情は、原発が必要ないまでになっており、
あとは政治と経済のバランスの問題でしかない、とはっきり言われるのです。

すでに原発のコスト高は、事故が起きる前から言われていたことで、
シティバンクは、「新規原発への投資にエコノミストは賛成しない」と言い、
マサチューセッツ工科大学では、「原発のコストは急激に上昇している」と言う。
ムーディーズでは、「新規原発を建設する電力会社の債券価格は低落する」として、
実際にこの10年間に新規の原発を建設している国は、少ないのです。
もう新しい流れは自然エネルギーしか無く、飯田さんはこれを第4の革命と言う。

世界的には、3.11以降に続々と「自然エネルギー100%シナリオ」が登場し、
4月14日は欧州気候フォーラムで、4月15日は欧州再生可能エネルギー協会で、
5月5日にはドイツ環境諮問委員会で、7月7日にはドイツ連邦環境庁で、
将来は自然エネルギー100%で、電力需要を賄う計画を採択しているのです。
それに比べて日本を見れば、いまだに原発神話から抜け出せずにいる。

とても科学者とは思えない、何の先見性もない御用学者の時代を終わらせ、
新しい時代に即した、戦略的エネルギーシフトへ移行していけば、
たとえエネルギーを減らしても、「暗く・寒く・がまん」する必要はない。
飯田さんはそれを実現するために、政治の中枢で頑張るとおっしゃっている。

僕らは自分たちが選ぶ政治家を通して、こうした動きを応援していけば、
そう遠くない将来には、見えない管理による利権政治ではなく、
住民自治による市民民主主義によって、社会を変えていけるのです。
どうやら原発は、その象徴でもあるようです・・・・