「自然農という生き方」

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ナマケモノ倶楽部の辻信一さんが、現代文化の新しい担い手である、
様々な分野の人たちと対話するシリーズ、ゆっくりノートブックの第8番、
川口由一さんとの対談をまとめた「自然農という生き方」を読みました。
僕自身が自然農に出会って、自分でも実践するようになって9年目ですから、
自然農のことは、だいたいわかるつもりになっていたのですが、
読んでいると、さらなる奥の深さを感じないではいられませんでした。

本の全体構成は、次の3部からなっています。

第1部:【美しい生き方を求めて】では、川口さんの生い立ちから、
自然農を始めた経緯、そして現代にいたるまでの道筋が書かれています。
ここで興味深いのは、先駆者である福岡正信さんの自然農に対して、
「不耕起、無肥料、無除草で、お米反当20俵」はありえない、ウソだ!
として、自然界の変わらざる基本に則った個々の対応の大切さが書かれている。
また、いのちの道、人の道からはずれるようなことをしなければ、
人も仕事も場もお金も、みんな後からついてくる!と言いきっておられる。

第2部:【自然農はいのちの道】では、耕さない農業について、
アメリカ先住民が永続的にやっていた不耕起を、開拓民が変えてしまった、
これは「いのちに沿った正しいあり方」ではないと言い切ります。
そのほか有機農法、EM農法、微生物農法、マルチ農法などの農法でも、
特定の物を投入するやり方自体が、間違いの元になると指摘します。
相対的に問題を解決しようとするのではなく、絶対的に問題を起こさない、
「答えを生きる」ことの大切さと「足を知る」ことの意味が書かれています。

さらに、孤立を恐れない強さについても書かれているのですが、
この強さは、人と対立して打ち負かす強さではなく、対立しない強さ、
真実を知ることで、間違いをも受け流す強さが必要だと説かれています。
ここまで来れば、自然農は単なる農法ではなく「生き方」だと言う意味が、
核心のところにおいて、伝わって来るものがありました。
僕らは自分が正しいことをしていると思うとき、その自負心から、
人を説得して導こうとしてしまいますが、それは対立を生むだけだと言う。

対立を生まずに、自ら正しい道を生きる強さを協調されたところで、
第3部:【答えはここに】では、辻さんならではの質問が投げかけられます。
強さが必要だとする川口さんに対して、人間は弱い者でもいいのではないか?
お互いの弱さを受け入れて助け合うのでなければ、強い者だけが蔓延る、
弱い者を排除する世界になってしまうのではないかと、問われたわけです。
これに対して川口さんは、他者と比較しての強弱はそのまま受け入れ、
宇宙的視野で、自らの立ち位置を自覚する強さを話されたのが印象的でした。

読み終えてみれば、なるほどと思うことがいくつもあって、
あとでまた読み返そうと付箋を付けた箇所が、10箇所ほどありました。
それらを頼りに、また全体を考えながらこの読後感想も書いているのですが、
「人生や人類に目的はない、しかし意味はある」とする考え方で、
その意味がどんなものであるのか、垣間見ることはできた気がします。
これからさらに「生き方としての自然農」を続けることで、
あらためて自らの人生を、味わい深いものにしていきたいと思いました。
 
 
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