暗黒の中の光明

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昨日は疲れて帰宅したあと、一眠りしたので、
夜は久しぶりに、遅い時刻まで起きていました。
するとNHKで、面白そうな番組が3本連続してあり、
その中でも10時半からのETV特集
「暗黒のかなたの光明~文明学者 梅棹忠夫がみた未来」が、
興味深いものでしたので、少し書いておきたいと思います。

まずお断りしておきますが、梅棹忠夫さんに関して、
僕は今まで、特別な意識をして著作を読んだことがない。
したがって彼の業績を知らないまま、番組への感想になります。
それでも書きたかった、一番大きな理由は、
幻の書と言われる「人類の未来」の目次録の中で、
「文明との競争」や「科学の本質」、さらには、
「暗黒の中の光明」と言ったテーマに共感したからです。

まず「文明との競争」において、彼は1970年代に、
現代文明がやがて“大流行病時代”になることを予見して、
それが人間の精神に及ぼす影響にまで、考えを巡らせていたこと。
さらには資源の枯渇や、社会の行き詰まりも予測した上で、
人類は「文明の成果と人間が、生存を掛けた競争をする」と言う。
この大きな視点が、現代を把握する上で大切に思われたのです。

さらに「科学の本質」においては、人間の優れた特徴である、
知的好奇心が人間の原動力であることを、認めた上で、
この科学こそ、人間にとって性欲と同じような【業】だと言う。
業であるから止めることはできないし、突き進んでいくけど、
それは必ずしも人間を利するとは限らず、破滅への道でもある。
そんな科学技術に則った文明は、常に暴走する可能性を秘めていて、
原発などに対しても、これは危ういと発言しているのです。

現代の科学文明が行く先を、暗黒の時代とまで言いながら、
それでも彼は、暗黒の中にこそ光明を見出していくのですが、
その原点となるものに、僕はあらためて共鳴します。
番組では案内役の荒俣宏さんが、最後に原宿の街に立って、
3.11以降に照明を暗くした街に、照らされるべきものの明るさを見る。
また番組のナレーションでは、理性対英知としての英知を挙げる。
そんな中で僕が一番注目したのは、やはり梅棹自信の表現で、
僕らが普段から心がけている、大切な指針を含むものだったのです。

「業ですから、
 自分で業であることを自覚して、
 自分をコントロールして、
 今までと違う生き方をしなくてはならない」

世界で起きている問題を、他人事にしないで意識することから、
まず変えることの出来る、自らの生き方をどうするか考える。
そのとき僕らは、教育や情報によって外からあてがわれたものを脱ぎ、
心の奥深くに根付いている価値観に、繋がれるかどうかが鍵なのです。
それは宗教学者の山折さんが言うように、
犠牲を出しながら生き延びることを基本とした西洋文明に対して、
みんなで助かろうとする東洋文明の英知に対する転換でもあるようです。