「スーパーセンス」

イメージ 1
 
「人は生まれつき超科学的な心を持っている」
と副題が付いた本「スーパーセンス」を読みました。
本質主義(エッセンシャリズム)と超自然信奉の関わりで、
公開講座「殺人鬼のカーディガン」が国際的に有名になった、
児童発達と認知神経科学の研究者ブルース・M・フードの著作。

よくある超科学的な話題も、結構好きで読んだ本は多いのですが、
この本はそうした“きわもの”とは一線を画す、明快な内容です。
僕らが普段自覚せずに行っている、超科学的な判断というものが、
どうしてもたらされるのかを、それこそ科学的に分析している。

例えば「誰かに見られている」感覚は、9割の人が実感しており、
視線に対して強い関心を抱くのはどうしてなのか?と言った疑問に、
作者は児童発達の見地から、わかりやすい説明を試みています。
あるいは無人販売所などに、人の目のイラストを配しておくだけで、
不正をする人が少なくなるのはどうしてか?明快に解説する。

そもそも若返りの化粧品など、実際には根拠がないにもかかわらず、
多くの人が不思議なくらい様々な効能を信じて、大金を投じている。
こうした心理はどこから来るのか、彼の話を読んでいると、
赤ん坊が外界を認知するとき、相手を自分に同化する成長過程に、
よく似ている心理状態が、大人になっても続いているからのようです。

すなわち対する何かを理解するときは、理性的に納得する以前に、
対象を本質的に把握することで、自分を理解するように相手を理解し、
その本質理解、ないしは信じ込みによって、嗜好的に判断する。
こうした判断は、科学的ではなくても人社会の絆を形成するので、
守らないでいると除け者にされるから、ほとんど本能的に会得する。

したがって、いくら教育を受けて理論的には納得していることでも、
もっと心の深層で、本質主義的な判断が科学的でない判断をさせる。
アメリカではいまだに、ダーウィンの進化論を受け入れない人が多く、
世界中に天国や地獄、神や悪魔を信じる人が多いのは何故か?
こうした疑問に真っ向から向き合って、科学的な答えを出し、
その内容が納得できる本は、今回初めて巡り会った気がします。

さらにこの本を読んでいると、人間社会の本質までが見えてきて、
科学的根拠よりも、情動的に安心や安全を信じてしまう人間の由来が、
みごとに描き出されているようにも、思われてくるのです。
僕らが逃れがたく持っている直感とは何か?が解明されることで、
いわれなき人種差別や、文化的な摩擦の正体も見えてくるのです。

自然に社会を形成する人間は、その本質において、
内側と外側を分けて捉える能力習性があり、群れを作る。
最初は自分と同じように相手を理解しようとして、手を伸ばし、
やがて多くのものを他者として、自らの内に外側世界を作る。
このとき取り残される、自己アイデンティティとしての世界が、
スーパーセンスとして残るのではないか、と思われました。

人間理解には欠かせない本の一冊になりました。
 
 
ブルース・M・フードの「スーパーセンス」は、↓こちらから。