「毎日かあさん」

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西原理恵子さんの人気漫画「毎日かあさん」が、実写映画になって、
元夫婦の小泉今日子さんと永瀬正敏さんが、共演したことに引かれて、
富山県内唯一の上映館まで、遠路足を運んで観てきました。
と言っても、僕は基本的に新聞や週刊誌を見ない暮らしなので、
西原理恵子さんの漫画は、ほとんど見たことがなかったのですから、
どんな内容か映画を見るまで知らなくて、なるほどなあ!って感じです。

見終わってこの映画、家族っていいなあと思わせるのですが、
一番魅力的なのは、兄妹の個性や成長が面白く描かれていることでしょう。
アル中で入退院を繰り返す父親でも、子どもたちによっては大切で、
理性ではなく、人間の基本的な姿が見えるような不思議な感情が沸いてくる。
実話に基づいた物語のようなので、あるいは中原さんの意図を超えて、
読者や観客を自由な思考にさせてくれる、事実の重みが心地いいのです。

口先では調子良いことを言いながら、アルコール依存から抜け出せずに、
施設への入退院を繰り返し、やがて癌で亡くなってしまう男なんて、
一般的にはろくでもない存在だから、母親である女の立派さが目立ちます。
人気漫画家とは言え、子育てと仕事の両立だって難しいでしょうに、
ろくでもない男を好きになったばかりに、えらい苦労を抱え込んでいる。
だけど子どもたちは、このろくでなしが好きなんですねぇ!

女は毎日かあさんとして、怒ったり笑ったりしながら立派に子育てし、
仕事もこなして自立しているし、家事だってそこそこちゃんとやっている。
その様子には、多くの女に共通する当たり前の風景としての自覚もある。
それに比べて父親の男は、戦場カメラマンとしてのトラウマがあるとしても、
まともに働くことも出来なくて、周囲の人に迷惑ばかり掛けている。
それでも、あるいはそれ故に、愛すべき人に見えるのはどうしてなのか?

この作品には、こぢんまり纏めるような感想は書きたくなくて、
思ったことだけ書き散らせば、子どもたちの目線で見る世界観が面白い。
もともと子どもは、誰かに頼らなければ生きていけない存在だから、
弱い者を大切に思う共感を、本能的に持っているのでしょうね。
だから父のダメな側面をいくら見ていても、良いところを大切に思って、
お父さんに会いたくて、大冒険まで企ててしまうのです。

子を思う親心は偉大だと言うけど、親を思う子心こそ無限大で、
この無限大の愛に引かれて、親は必死に子育てをするのかも知れない。
そしてこのろくでなしの男親ですが、親を思う子心に救われて、
破滅的だった心に、平安を持って生き終えるのでしょう。
日々暮らしを生きていく毎日かあさんに比べ、たまに父さんは、
現代では見えにくくなった敵と、孤独に闘っていたりするのです。

人を救うのは、やっぱ愛ですね~♪