「11のスタンダード」

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マスコミで人気があるらしい、エンタテイメント企画集団?
「指南役」が企画編集した「11のスタンダード」を読みました。
~一流の仕事人たちが大切にしている~、との副題があって、
発想としてなんだかなあ・・・と思いながらも、読んでみたのですが、
正直言って、全体として何が言いたいのかよくわからない本でした。

1,定番のまとめーーーーーーーーーーーーーー
  ○男のお洒落はスタンダードでなくてはならぬ。
    個性的なお洒落は単なる場違い。
  ○ピカソのデッサン力は卓越していた。
    スタンダードを極めた先に天才がある。
  ○マイケル・ジャクソンは、ファンが聴きたい
    “定番”曲を大事にした。

2,笑いのまとめーーーーーーーーーーーーーー
  ○優れた科学者、政治家、
    クリエーターにはユーモリストが多い。
  ○会議前の無駄話=アイスブレイクは必須。
    後の会議が活性化する。
  ○優れた作品とは笑える作品。
    それは言葉の壁を超えて理解される。

こんな感じで、社交、時間、お金、汗、食事、本、尊重、余裕、発想、
と続くのですが、読んでいるうちにだんだんつまらなくなってしまう。
何がそんなにつまらないのかと思ったら、結局のところ、
この本の作者は、読者に何を伝えたいのかさっぱりわからない。
思いついたことを並べて書いて、なんにも統一性がないから項目に分けて、
これがスタンダードだと、勝手に言っているようなものなのです。

 ○金を残して死ぬ者は下、
   仕事を残して死ぬ者は中、
   人を残して死ぬ者は上。

なんて大切なまとめも、これがどのようにスタンダードなのかわからない。
全体としてどんな価値観を勧めているのかもわからないし、魅力も感じない。
以下同じように、並べられているたくさんの言葉はそれぞれ理知的で、
示唆に富むことも多いのですが、バラバラで何が言いたいのかわからない。
まるで高級百貨店のバーゲンセールのように、それぞれは高級なはずなのに、
ぐちゃぐちゃで、何が魅力なんだかよくわからない世界になっている。

こう書いていると、たかが一冊の本の評になぜこんなにムキになるのか?
そんなにつまらない本なら、わざわざ紹介しなければ良さそうなものですね。
それなのにどうしても書いておきたかったのには、理由もあるのです。
日本人はマスコミが言うことを信じやすいので、これが“常識”と言えば、
いつのまにか社会の至るところで、それが常識になってしまうのと同じように、
これが“スタンダード”などと、思い込まれて欲しくないから書くのです。

スタンダードなんてものは、人に言われて思い込めばいいものではありません。
生活の様々な場面で、それぞれの人が工夫を凝らしながら生き抜いていくとき、
そのノウハウが多くの場所で試され、やがて収斂されて一般的なものになる、
それがスタンダードの始まりであり、原型になる思うのです。
かつての70年代に見られたような、何もなかった時代ならともかく、
現代のように過剰な時代に、古色然としたスタンダードは奇妙です。

なぜならこうしたものはもう“目指すもの”ではないからで、
現代に必要なのは、今の過剰から脱出するための方向性なのです。
価値観としての方向性を示すことで、それを機軸に各自が判断できる、
そんな方向性から“スタンダード”が生まれる必要があるからです。
 
 
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