「アンダンテ ~稲の旋律~」

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近年になって、農を主題にした映画は増えていますが、
なかなか人に勧められるほど、完成度の高いものがない。
そう思っていたら、内容的にも映画的にも魅力的な、
心から笑って泣ける、完成度の高い映画に出会いました。
人間再生の物語と謳う、「アンダンテ ~稲の旋律~」です。

ピアノ演奏家に育てたかった母親の期待に、重圧を感じて、
仕事の挫折から引きこもりになった若い女性(千華)に、
ミュージカルの歌姫と言われる、新妻聖子さんを配し、
彼女のSOSに、誠実に答える農家の男性(晋平)が筧利夫さん。
その他の出演陣も、ゲストを含めて個性豊かなはまり役が多く、
筧さんの父母役の上田さんと庄司さんは、特にいい味でした。

思うようにはいかない人生を、そのままに受け入れて、
「だいじょうぶ、転んだって、いいんだよ」と言い続ける、
40代後半で独身晋平が、引きこもりだった女性の心を開く。
ところが気が付くと、晋平自身が千華に救われながら、
やがて、千華とは別の女性に惹かれて結婚を決意していく。

取り残されたように見える千華ですが、彼女はそのとき、
自分が母親との確執に囚われていたと気付き、和解を求める。
その心に応える母親もまた、別の確執から逃れるきっかけを得て、
母娘は、信頼関係を取り戻しながら、新しい旅立ちをします。
田植えから始まる稲の生長に合わせて、人間もゆっくりと育ち、
型にはまらない生活をする農家の姿が、見ていて心地いいのです。

お金を儲けるという意味では、まったく合理的でない農法で、
失敗しても笑って、何度でもやり直せばいいと言う晋平は、
僕らと同じ、生き方としての自然農に近いものを感じさせます。
この映画の主題は、農を取り上げながらも人間の生き方で、
「曲がって植えようが稲はまっすぐ伸びる」感覚が気持ちいい。

原作の旭爪(ひのつめ)あかねさんはもちろんのこと、
監督の金田敬さんも、無駄や不器用さを稲穂のように応援し、
その価値を知る桂壮三郎さんが、しっかり企画制作されている。
上映はほとんど自主上映のようで、普通の映画館ではありません。
見たい方は、公式ホームページ↓から上映場所を確認ください。
http://www.ggvp.net/andante/index.php
 
新妻聖子さんが「アンダンテ」の主題歌を歌うステージが見られます。
↓あまりに歌唱力がすばらしいので、聞いてみてください。