他人事を自分事にする社会を

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市民企画講座「暴力で解決しない社会を」の第2回、
富山福祉短期大学准教授の、根津敦さんによる講座で、
「他人事を自分事にする社会を」に行ってきました。
根津さんは、大学の先生と言うより社会福祉活動家で、
毎週富山のホームレスの人に、食物を配ったりされている。
そんな人だからこそ、話も聞いてみたかったのですが・・・

まず冒頭から、話したいことが沢山あるとおっしゃって、
配布された資料も、A3用紙4枚の裏表にぎっしりとある。
ほとんどはパワーポイントを縮刷したものでしたが、
裁判の対話記録や、ミスチルの歌詞まで付いています。
この資料の制作に、朝3時から掛かったと話されるのは、
市民企画だからこそ伝えたい、根津さんの思いがある。

まず「他人事を自分事に」が、安部志郎さん「福祉の心」で、
広く紹介された言葉であることを、説明された上で、
自分がどうしてソーシャルワークをするかを話されます。
日本で福祉を学ぶ学生は、福祉施設に就職するのが目的ですが、
多くの先進国では福祉施設が消えて、ソーシャルワークになった。
その理由は、施設に閉じこめることもまた差別的思想なので、
差別しない社会的な寄り添いが大切だと、認識されるからです。

日本の福祉には、長年こうした思想が育っていないので、
彼は主に海外で福祉を学びながら、日本で教育実践されている。
それではこのソーシャルワークとは、どのようなものなのか?
民主主義の在り方として、日本では「少数意見を尊重する」けど、
欧米では、正しい意見ならそれを「多数意見になるよう活動する」。
この社会活動への直結が、大きな違いになっていると言うのです。

言われてみればその通り、日本の常識は海外の常識とは違って、
社会福祉でさえ、お上の許可を得た人たちがお上の指示で行っている。
ところが欧米諸国のソーシャルワークは、既成の常識に立ち向かい、
差別があるなら差別そのものを無くす、社会活動の中にこそある。
体制の仕組みや多数派の意見に対峙して、当事者と共に歩む、
いわば権力に対する民主主義の担い手がソーシャルワーカーなのです。

経済グローバリズムの問題から、あらゆる価値の商品化問題まで、
そうした気付きに至る道筋は違っても、ほとんど僕と同じ価値観で、
次から次に出てくるのは、思わず頷きたくなるお話の連続でした。
日本における男女差別がどのようなものか、と言った問題も、
今や女性自身でさえ、差別はなくなったと思う人が多い中で、
はっきりと資料を示しながら、明らかな差別状態を浮き彫りにする。
この見えない差別の根底には、パワーコントロールの思想があるのです。

それでは、この無意識のパワーコントロールをどうすれば、
穏やかで平等な関係社会に変えていけるかが、課題と言えます。
その方法を、森田ゆりさんの「ドメスティック・バイオレンス」から、
対比図形を引用して、具体的に対応策を考えようとされていました。
この時点で時間が足りなくなって、話しが端折り始めたので、
この本は、是非とも自分で手に入れて読んでみたいですね!

日本でソーシャルワークと言えば、お上の許可を得た相談員ですが、
世界的に見れば、お上のような権力に対峙して弱い側に立つ、
あらゆる強制的権力や、常識的差別に対峙して闘うことなのです。
この闘いの唯一の武器は、弱者へのエンパワーメントであり、
こうした構図を知っていれば、エンパワーメントの大切さがわかり、
僕らは自信を持って、自らの社会活動が出来るのだと思いました。