ユニクロの成長と限界と可能性

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僕は現代の企業活動には、大きな疑問を抱いているし、
個々の企業のことを、どうこう言うつもりもないのですが、
ユニクロのファースト・リテイリングには、関心があります。
それは十数年前に親しかった友人が、興味を持っていたことから、
その後の拡大する企業動向を、何気なく見ていたこともあるし、
話題としてもCMとしても、日本を代表する企業になったからです。

企業活動には興味のない僕が、なぜユニクロを注目するのかは、
この企業には日本の経済界が進む方向と、その限界が見えるからで、
さらに、これからの世界の有り様を考える参考になるからです。
ユニクロは1984年に、広島で第1号店を出店したチェーン店で、
今では日本中どころか、世界の多くの場所で名前を知られている、
カジュアルウエア専門の、株式非上場の株式会社です。

株式上場をしていないので、代表取締役会長兼社長である柳井正の、
どちらかといえばワンマン会社ですが、それ故に活動も機敏なようで、
多くの意志決定は、柳井さんの判断で下されると思われます。
それが素早い動きと、ブレのない社風の確立を生みだしており、
日本中に同じユニクロイメージの店舗が、急速に増えたと思ったら、
同じ勢いで、今では海外店舗の数を急速に増やし続けているようです。

この急拡大を支えているのが、ベーシックカジュアルを基本とした、
世界中の誰でもが望んでいる着衣の快適さと、手軽な価格や品質、
さらには品揃えやサービスなどの、日本的な緻密さと言えるでしょう。
日本で受け入れられた緻密なサービスは、必ず世界中で受け入れられる、
その判断が正しいことは、日本の代表的製造業がすでに実証しており、
ユニクロはそれを、衣料サービス業でも実証して見せているのです。

すでに日本中のどこでも、手近にユニクロの店舗があるので、
しかも強力なCM展開、低価格、安心品質、などが信用を獲得して、
この20年間で、日本のトップ企業になったことはご存知の通りです。
さらに世界戦略として、ニューヨーク、ロンドン、パリ、上海に、
それぞれ旗艦店を出して、日本と同じサービスを広めようとする展開は、
文化、習慣の違いを越えて、受け入れられる可能性は高いでしょう。

ここでどうしても、考えておかなければならないことが出てきます。

柳井さんは、少なくとも口先では無限の可能性があるかのように、
つまりこの先もグローバル化を進めることで、成長は続くと発言する。
企業のトップとして、そのように言いたい気持ちはわかるのですが、
すでに日本で起きていると同じように、やがて需要は満たされてしまう。
ベーシックであるが故に、満たされる可能性は高いわけですし、
実はこの限界こそ、世界を救う可能性に繋がっているかも知れない。

すでに地球資源の埋蔵量は、欧米型の生活を世界中の人々が始めると、
不足することが明らかになってきていますし、必要エネルギーも、
生産と消費を拡大し続ければ、そう遠くない将来に破綻することになる。
と言うことは、長い人類の悲願が自由平等の世界観だからといって、
今も増え続ける世界人口に、欧米型の生活をしてもらうわけには行かず、
成長の限界をどのように着地させるかが、今後の重要な課題になるのです。

この世界的な課題に対して、ユニクロは一つの可能性を示している。

果てしなく付加価値をつけて、生産と消費を拡大させるのではなく、
あらゆる人の基本的な生活を快適にする、ベーシックカジュアル分野で、
まだそれを手に入れていない人たちに、サービスを提供し続ける。
この世界観をベースにして、地球資源を枯渇させないレベルを求め、
そのレベルに見合ったベーシックカジュアルを、提言していけたなら、
CO2のカーボン・デモクラシーのような、世界標準となりうるはずです。

日本でこれ以上売り上げが伸びなくなっても、マイナスと考えずに、
将来に取り組まなければならない、人類課題の先駆けとして捉え、
日本型循環を確立して、世界に広める戦略を考えれば展望が開けます。
さらにこのベーシック・カジュアルが、世界標準となってくれたら、
破滅しないレベルでの、快適な生活の衣料の指標ともなりうるでしょうし、
この考え方が他の生産分野にも広がれば、世界が目指す方向性にもなる。

ユニクロの世界戦略で見せる、日本型サービスの底流にあるものが、
日本文化独特の質素できめ細かな美意識や、全体の調和からくる安心感で、
これをもって世界に出て行き、市民デモクラシーと繋げていただきたい。
そうすれば、ユニークな日本の文化は世界を救うベーシックとなって、
拡大生産のために資源や土地を奪い合う世界から、今ある物を工夫して、
すべての人が仲良く快適に暮らせる社会も、不可能ではないと思うのです。