「無防備」
実はこの映画、撮影された場所が砺波平野で、
いくつかよく知っている場所も出てきます。
富山県の映画監督が撮った映画と聞いていたし、
それが「ぴあフィルムフェスティバル・グランプリ」
となって、いつか見たいと思っていたのですが、
去年の劇場公開では見られずに、DVDとなりました。
いくつかよく知っている場所も出てきます。
富山県の映画監督が撮った映画と聞いていたし、
それが「ぴあフィルムフェスティバル・グランプリ」
となって、いつか見たいと思っていたのですが、
去年の劇場公開では見られずに、DVDとなりました。
見てみると、まったく不思議な印象の映画でした。
商業作品として見た場合に、へたくそに見える。
意図して狙ったとしても、“間”の取り方が奇妙で、
見ていて何度も、イライラさせられたりするし、
必要なときだけに、間があるのではなくて、
終始ダラダラと間があるので、快適に見られない。
ところが、全体としてはよくわかる感覚もある。
これは何かと考えていたら、日常生活です。
僕らの日常生活は、普段からドラマチックでなく、
どちらかと言えば、淡々と間延びして過ぎていきます。
その面白くもない日常に、だけどドラマがある。
劇中には、気の利いたせりふもほとんどないままに、
誠実で不器用な主人公の性格は、普通に伝わってきて、
なんとなく、わかってしまう信頼感がある。
そんな中に、人生最大のドラマである出産が、
ありきたりの日常を背景に、普通に始まってしまう。
見渡す限り誰も頼る人がいない、広大な農地の真ん中で、
妊婦が突然つわりにうずくまってしまったときに、
「幸福な妊婦」に嫉妬して、殺意まで抱いた主人公が、
彼女を助けようと、俄然走り出していくのです。
過去の苦い記憶や、トラウマまで振り捨てて、
近くにあった軽トラックを、無断拝借して運転し、
妊婦を産院にまで連れて行って、無事に出産します。
この時も、汚れた手足ぐらい洗えよ!と思うのですが、
妊婦から生まれ出ようとする、赤ん坊の頭を見ると、
すべてがどうでもよく思えるくらいの、感動を覚えます。
母体から赤ん坊が産まれる出る瞬間を見る感動!
そう言えば、出産を映した映画は数多くありますが、
たぶん最も感動的な、会陰が開いて赤ん坊の頭が見える、
あるいは、赤ん坊が産まれてくる様子を見せた映画は、
今まで、一本もなかったのではないでしょうか?
その意味では、ありきたりの日常で最も感動的な、
出産をテーマにした、ドキュメンタリー映画とも言える。
そう思って映画の解説を読んでいたら、何のことはない、
この映画は、市井監督の妻である今野早苗さんが妊娠して、
「出産を映画に撮りたい」と提案があって始まった、
元々出産を映画にしたかった作品だったのです。
新しい命が産まれる瞬間に、集約される人生を映した、
なるほど、途中退屈にしても、秀作だったと思います。