ハーバード大学の白熱教室

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3月18日の記事で紹介した、NHK教育放送の番組、
ハーバード大学マイケル・サンデル教授による連続講義が、
昨日から始まったので、さっそく見てみました。

アメリカ建国よりも古い、ハーバード大学の歴史上で、
 履修学生の数が最高記録を更新した授業!とされるこの講義は、
 大学の劇場でもある大教室で、毎回千人を超える学生が集まる。」
http://www.nhk.or.jp/harvard/about.html

このように紹介される、今回の「Justice(正義)」を見ていると、
なるほど学生と教授が対話しながら、問題の本質を探っていく。
いわゆるソクラテスの昔から、教育の最高の姿とされる対話形式で、
実社会の困難な問題に、ストレートに取り組んでいくものでした。

番組は、4月4日~6月20日までの全12回シリーズで、
毎回25分ほどのレクチャーが、2本ずつ納められて、
その合間に、千葉大学の小林正弥教授の解説が入ります。
小林教授は、以前から公共哲学の大切さを訴えられている人で、
その教えには、僕も深く共感するところがありますから、
今回の番組には、うってつけの解説者と思われます。

第一回の昨日は、「殺人に正義はあるのか?」を問うて、
目の前に事故が迫ったときに、(A)を選べば5人が死に、
(B)を選べば1人だけが死ぬなら(B)の選択が正しいのか?
その正しさの根拠は何なのか?と問いかけを進めていきます。
また実際に、イギリス船の事故で起きた例を取り上げて、
4人で漂流していたときに、ひとりを殺して食べたことに対し、
あなた(学生)なら正しい判断だと思うかどうか?
正しいとすれば、あるいは間違いだとすれば、何故なのか?

現代人が比較的判断に使いやすい道徳的基準は、いわゆる合理主義、
結果として“より大きな利益”に至れば良しとする帰結主義です。
だけどそうでない価値基準もあり、いかなる理由でも殺人はいけない!
とする意見もうまく拾い上げて、カントの定言的な道徳を紹介します。
こうした違う考え方を取り上げることで、一つの答えに安住しない、
議論し続けることで、答えを出し続けることの大切さを示すのです。

政治は最大多数の最大幸福を目指すことが、正しいとされているけど、
多数派の理論のために、少数派は犠牲となって殺されていいのか?
正当な手続きさえ整っていれば、人を殺していいのか?
あるいはまた、本人の同意があれば、その人を殺していいのか?
実に難しい問題の、答えを導く価値観にメスを入れていくのです。

僕がこれ以上内容を話すのは、控えておきますが、
これが6月20日までに12回、24レクチャーも聞けるのです。
その第二回は4月11日、「命に値段はつけられるのか?」として、
また二つのレクチャーが用意されているようです。
以下、全回のアウトラインも公表してありますので、
これを見て関心のある方は、ぜひ番組をご覧になってください。
http://www.nhk.or.jp/harvard/archive.html