「タッチハンガー」

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友人に勧められた、三砂ちづるさんの本の中から、
「タッチハンガー」を選んで、読んでみました。
~がんばり続けてなお、満たされないあなたへ~
と副題があって、少しページをめくって読んでみたら、
気になることが次々と、たくさん書いてあったのです。

2004年1月~2008年8月、雑誌「ウフ.」に、
連載された随筆風の文章を、一冊の本にされたものですが、
雑誌を読まない僕にとっては、まったく新鮮な作品です。
しかも人間の「触れる」行為の大切さに関しては、
僕も以前から大切だと思っていて、特に子育てなどでは、
これが不足すれば、健全な成長さえ危ういと考えているので、
読み進めるにつれて、僕も全面的に共感していきました。

毎月掲載された随筆形式で、48の文章が載っていますが、
特に共感する内容には、付箋を貼って読み進めていたら、
本の上が付箋だらけで、分厚くなってしまいました。
特に三砂さんは、ブラジルでの子育て経験が長いので、
ブラジルの人たちの感覚が、日本人とは大きく違うことを、
実に生活感豊かに表現されているのが、面白かった。

例えばブラジルでは、子供に将来の夢を聞いたりしない。
大人は誰もそんなことを聞かないし、学校でも聞かれない。
「なぜ将来の希望を子供たちに聞かないのか?」って質問に、
「大きくなったときのことは今はまだわからないでしょ」
と答えられたと、この本には書いてあります。
ブラジルでは、子供は大人の予備軍ではないので、
子供として今ある喜びの方が、将来よりも大切だと考える。

実はこうした考え方は、子供に限らないのであって、
日本では、将来の成功のために今を我慢することが好きで、
大人になっても、将来の心配ばかりして暮らす人が多い。
だけどブラジルでは、子供も大人も今が大切なので、
将来のために今は不幸でもいいなんて、考えないのです。
将来を心配して、いつも我慢ばかりしている日本人と、
将来よりも今を幸せにすることが大事だと思うブラジル人と、
どちらが本当に幸せか?自分に問うてみるのもいいかも。

もちろん、すべての人を国籍で一括りには出来ませんが、
親しい人に触れあうことで、心を通わすことを大切にする、
そんなブラジル文化が、懐かしい日本を彷彿とさせることは、
以前にもこのブログで、記事に書いたとおりなのです。
むかし日本の親子は、べたべたに触れあって一心同体で、
それが子供たちに、大きな安心感を与えていたと思われる。
振り返って現代、社会全体に喪失感が大きいのは何故か?

取り上げる話題として、命に直接向き合う内容が多いので、
「会陰切開」「股に布」「布ナプキン」「緊急避妊法」など、
さらには「血まみれで生まれる?」と、女の生理的な話が多い。
ところがそれを読んでいると、納得する内容ばかりなので、
そうでない生理を普通と思っている現代の日本女性って何なの?
と不思議な気持ちにさせられたのも、事実なのです。

読み終わってみると、今の日本の歪んだ姿がよく見える。
戦後から続くアメリカによる占領で、失われてきた日本文化を、
まだ思い出せるうちに、もう一度検証しておく必要がある。
この本を読んで、そんな思いを改めて強くしました。



三砂ちづるさんの「タッチハンガー」は、↓こちらから取り寄せられます。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4838719639?ie=UTF8&tag=isobehon-22