マネー資本主義を超えて

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NHKスペシャル「マネー資本主義」の第4回は、
ウォール街の“モンスター”金融工学はなぜ暴走したのか」
と題して、金融投資のリスクを数学的に解消する手法が開発され、
これによって世界中から資金を呼び込んだ金融商品が、
やがてサブプライムの躓きで破綻した様子が解説されました。

日本では直接こうした金融工学へ走った金融機関は少なくて、
それ故に、アメリカで金融破綻が明らかになったときも、
日本経済は堅調だからたいした影響は受けないと考えた人もいた。
だけど金融工学が数式通りに単純ではなかったのと同じように、
その影響は、日本の経済界にも大きな影を落としてしまったのです。

こうした失敗を修正するために、アメリカの金融界では、
リスク見積もりの計算式に、人間の心理的な要素まで組み入れて、
より正確な数式による改善を図ろうとしている人々もいるようです。
いずれは丸山圭一郎が唱えたような“過剰”による意味の変容も加味され、
新たな数式は新たな金融拡大の道を開拓していくことになるでしょう。

だけど相変わらず、そうした金融拡大や経済拡大がもたらす、
本質的な意味の変容による、幸せの崩壊には思いが至っていません。
制限のない拡大生産と拡大消費によって、世界中にもたらされた不安、
やがて世界中の枯渇資源を使い果たしても、貧富の差は拡大して、
その間に自然環境は、取り返しのつかない過負荷を負うと推測される。
この不安材料を払拭できる道は、まったく見つかっていないようなのです。

それでも、有限資源を武力によっても確保しようとしたブッシュ政権が、
世界の対話と調和を掲げて、グリーン政策を推し進めるオバマ政権になり、
何かが大きく変わろうとしていることは、大勢の人が気付いています。
その何かは、もう単に景気を拡大すればいいと言うものではなく、
新しい時代の経済の在り方、人々の暮らし方までが問われ始めている。

グローバリズムの念仏と共に、ひたすら経済拡大を求めた時代から、
破壊的拡大でない、持続循環型の社会を目指す模索が始まったのです。
こうした分野の技術であれば、過去には鎖国による自給自立をした、
日本文化と技術こそ、大きな可能性を持っていると言えます。
すなわち日本は、商品開発に見る小手先のテクノロジーだけでなく、
新しい循環型社会がどのようなものかを示す、思想的指導者になれる。

ところが現実を見ると、政財界の方針は旧態然とした経済拡大を目指し、
商品個々のテクノロジーが目指す省エネや循環型技術とは裏腹に、
政策的には何ら循環型でも自立型でもない、経済拡大を目指している。
このようなちぐはぐで矛盾した政策では、世界のリーダーにはなれません。
日本でも政権交代が起きれば、循環型社会に方向転換できるのかどうか?

この番組のあとで教育放送を見たら、日本が世界でどう見られているか、
世界中の国々でアンケートを取った結果が、紹介されていました。
その中で日本は、技術やテクノロジー立国としての信頼はまだまだ高い。
だけどそれ以外の面では、とらえどころのない印象がありそうです。
それはまだ日本の真価が発揮されていないと言うことでもあり、
方向さえ定まれば、自給自立する循環共生社会のリーダーになれるのです。