「RNAルネッサンス~遺伝子新革命」

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田原総一朗さんと中村義一さんの共著による、
「RNAルネッサンス~遺伝子新革命」を読みました。
2006年6月に、すでに出版されていた本なので、
今では、特別新しい内容でもないのでしょうが、
こうしたRNAの役割は、まったく知りませんでした。
現代人類の知識の進歩は、本当に早いものですね!
気を付けていないと、自分が過去の人になってしまう。

遺伝子が、DNAとRNAで成り立っていることは、
たぶん僕らが学生の頃に、もうわかっていたはずです。
当時の記憶に間違いがなければ、主役はDNAで、
RNAは、単なる伝達物質と教えられていました。
ところが今では、DNAよりもRNAが大事だと言う。
たとえば人間と寄生虫などは、DNAはほとんど違わず、
RNAの違いで、これだけの差があるらしいのです。

もう少し詳しく、かつ単純に話をするならば、
人と回虫は、DNAの数も内容もほとんど変わらなくて、
それを取り巻く空間と、RNAの環境が大きく違う。
昔はこの空間の広がりの意味や、RNAの役割がわからず、
DNAのタンパク質だけを見て、これを主役と考え、
役割のわからないRNAをジャンク物質と考えていた。
ところが同じDNAの人と回虫が、どうしてこれだけ違うのか、
調べてみたら、それはRNAの活動によるとわかったのです。

言ってみれば、材料が同じでも使われ方が違うだけで、
こんなに大きな差が出来るところに、RNAの役割りがある。
RNAの仕事ぶりは、限られた材料を自由自在に取り崩し、
また組み合わせたりすることで、多様な存在を作り出せるのです。
同じ材料を持っても、硬直した内容でしか使えない回虫に比べ、
人のRNAこそ、優れた能力を持って活動していたのです。

この新しい発見に合わせて、まず医薬品の世界で研究が進み、
すでにいくつかの新しい薬も、開発されているようですが、
僕が注目するのは、もっと汎用的な意味合いのことです。
DNAのように、それ自体がタンパク質等の価値で計れた時代から、
現代はRNAのように、それをどう活かせるかの時代になってきた。
こうした社会現象さえ、科学技術と連動して理解される不思議さです。
たとえば、大金を掛けて建設される箱物が重要とされた時代から、
その使い方として、市民活動が大切になってきた時代を現している。

こうした穿った見方は、単なるこじつけではないのです。
歴史上人類がやってきたことは、科学でも文化でも連動しており、
片方の意味合いを、もう片方が説明してくれることが多かった。
キリスト教の歴史と共に発達した、近世科学の歴史も然りで、
名もなき人が繋がって、社会を動かし始めた現代は、
タンパク質でさえないRNAが認められる時代に相応しい。

たぶん、この本をこんな視点で見る人は珍しいのでしょうが、
僕は読んでいるうちに、そんなことを考えさせられたのです。


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