「スラムドック&ミリオネア」

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今年のアカデミー賞で、作品賞ほか8冠に輝いた映画です。
日本では、みのもんたさんの司会で有名なミリオネアですが、
ほとんど同じスタイルでの、番組の進行に合わせて話が進み、
その中での回想録のように、主人公の生い立ちが出てくる。
監督はダニー・ボイル、出演者は知らない人ばかり!(^_^;)

この主人公ジャマール・マリク、兄のサマール・マリク、
そして仲間であり、ジャマールの恋人でもあるラティカに、
それぞれ、幼少時、少年期、青年期の配役を与えている。
この変化と、それでも変わらない心との対比が素晴らしく、
良質のエンターティメントであって、拍手したい感覚がある。
なるほど、これなら作品賞を取るのも頷ける傑作でした。

舞台がインドなのも、偶然ではない真実味があります。
無学なジャマールが、なぜ難しい問題に答えられるのか?
「これは何かトリックのある詐欺だ!」と警察に連行され、
拷問に近い取り調べを受けるのですが、彼は口を割らない。
ところが、どうして答えがわかったのかと問いただすと、
彼は自分の生い立ちから、今までの生き方を話す中で、
答えがわかった理由が、明らかになっていきます。

彼の人生に貫かれた、朴訥なまでのラティカへの愛を知り、
取り調べをした警部は、彼が嘘をついていないと判断します。
そして彼を釈放して、ミリオネア最後の質問に立ち向かわせる。
ジャマールは、最後の質問で兄のマリクにテレホンしますが、
その電話に出たのはラティカで、答えはやっぱりわかりません。
その同じ時刻に、マリクはすべてのしがらみを消します。

物語自体は、さほど驚くようなものではないのですが、
インドのスラム街から、表社会に顔を出した若者が見たものを、
この映画では、彼の視点で追いかけているのが新鮮でした。
実際にはあり得ないような、偶然に満ちた話の展開であっても、
バカバカしく思えない、人の心の真実が見え隠れするのです。
言ってしまえば、大人のおとぎ話のような映画なのですが、
金を追い求めて破滅した兄と、愛を求めて億万長者になった弟。

宗教紛争や売春や、子ども虐待や裏社会や、殺人や陰謀まで、
この映画には、ありとあらゆる犯罪が出てくるのに、暗くない!
この明るさこそ希望の光であって、ジャマールの意味なのです。
世界の縮図のように混沌としたインドのスラム街にビルが建つ、
その変化に飲み込まれた兄と、自分を生きた弟がいたのです。



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